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奥州市/鉄の新たな質感を求めて

南部鉄器鋳物師/岩清水久生
岩手県・奥州市

南部鉄器は岩手県盛岡市と奥州市水沢区で生産されている鉄器の総称。
旧南部領の盛岡と旧伊達領の水沢がもつ歴史はそれぞれですが、
いずれも日本各地から呼びよせられた鋳物師(いもじ)や茶釜職人達によって、
鉄瓶、鍋、釜、梵鐘、仏像、燈籠、大砲など様々な鋳物製造が行われてきました。

奥州市水沢区に、岩清水久生さんを訪ねました。

デザイナーから鋳物師へと転身し独立した岩清水さんの工房「空間鋳造」は、
現代の生活者の暮らしのなかで違和感なく使うことのできる鉄瓶を提案しています。
鉄の魅力の表現に心血を注ぐ岩清水さんに、お話を伺いしました。

鉄というのはできあがったときは銀色ですけど、それが錆びて、朽ちて、そしてやがて土に戻るわけです。いつか地球に還っていくものであるということが、鉄の最大の魅力じゃないでしょうか。
無くなるものだからこそ感じる魅力。
その存在自体の魅力というものが鉄にはあると思います。

鉄という素材を使ったものづくりのどこに面白さを感じるかというと、鉄の質感なんですね。

鉄の自然な質感を表現するものとして考えた技法が「焼き肌磨き」というものです。
型から出来あがったものを削って削って削って自分の考えているフォルムを作り上げていくんです。そうするとその質感はまったくの「無」に近いものになるんです。そこから改めて醸し出される鉄の質感というものに圧倒的な存在感が宿るんですね。
400年前からある南部鉄瓶という歴史のなかで、この「焼き肌磨き」というテクスチャーはまだ出てなかった。新しい一歩なんです。

南部鉄瓶を思うとき、日本の伝統産業として、それが使われる生活スタイルが浮かんでくるといいなあとずっと思っていました。
使いやすい機能美であるとか、それがその空間に置かれたときに「楽しい」とか「美しい」と感じてもらえるような、そういうものとして存在して欲しい。私がデザイナーを経て鋳物の職人となり「空間鋳造」を立ち上げたのは、南部鉄器という歴史を抱えながらも今という時代のシンプルな道具として作りなおしたい、という思いがあったからです。

南部鉄器づくりをこれからもずっと好きでありつづけることが大切なのだと思います。この仕事はかっこいい仕事なんだと思っていますし、好きでなきゃやっていけないとも思っているんですね。

この鉄瓶づくりに膨大な工程がかかっていることは人にはなかなか伝わらないでしょうけど、だからこそ真面目につくって鉄瓶を世に出していって、何らかのかたちで響いたり連鎖したりしていくことを願います。

鉄瓶をつくりつづけること。
そして、鉄瓶に限らず、鉄の新たなテクスチャーを編みだすこと。
その両方に着地していきたいと思います。

写真/東北STANDARD
this article from 東北STANDARD