LIVE + RALLY PARK.(ライブラリーパーク)

TALK LIVE/東北にあふれる伝統工芸品の可能性 

2018年3月24日、LIVE + RALLY PARK.(ライブラリーパーク)で開催された「North Japan Exhibition 東北 暮らしの展示会」では東北のキ ーパーソンによるTALK LIVE(全7回)が行われました。岩手県奥州市から川島佳輔さん(株式会社COKAGE STUDIO 代表取締役)をお迎えし、LIVE + RALLY PARK. の仕掛け人のひとりである本郷紘一さん(Sendai Development Commission株式会社代表取締役)が聞き手となったトークライブ第4弾のテーマは、デザイン、カフェそして地域プロジェクトなど幅広い動きを展開されている川島さんのこれまでの活動とこれからの展望について、また奥州というまちの魅力ついて。明るい陽ざしを浴びながら春風そよぐ縁側に腰掛けて交わされたおふたりのトークの模様の一部を、以下、お伝えします。

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左より川島氏、本郷氏。

川島:こんにちは、コカゲスタジオ代表の川島です。デザインと編集の仕事のほか、カフェと託児所を併設したCafe & Living UCHIDAという店をやってます。新年度からは奥州市で「小さい旅をつくる」というコンセプトで「Walk on Soil」という取り組みを始めていきます。よろしくおねがします。

本郷:カフェと託児所がひとつになってるって新しいですね。

川島:ひとりめの子供を育てるときに「子育てってこんなに大変なのか!」っていう思いをしたので、そういうのをまちのみんなで協力し合えたらもっと地方での暮らしが豊かなものになるんじゃないかって思いまして、友人でもある長野のReBuilding Center JAPANの東野唯史さんに空間デザインをしてもらって、自分たちでリノベしてつくりました。

美容院に行くとか、病院に行くとか、買い物に行くとか、そういうときに気軽に使ってもらえるような日常に寄り添ったかたちの託児所です。カフェを併設したのはいろんな世代のいろんな人に知ってもらいながらやっていけたら、と思って。

本郷:僕らが生まれる前の時代って、子どもをまちで預かるよっていうコミュニケーションがあった気がするんです。今は保育所はあるけどそういうコミュニケーションがないから、その意味では昔あったものをもう一度求めているところもあるような気がしますね。

川島:僕らも保育園や幼稚園のポジションになりたいわけじゃなく、おうちと保育園のちょうど中間くらいの場所、「子育てのサードプレイス」として、地域の人たちと子どもたちが触れ合えるような、昔懐かしい光景があるような空間にしたいんです。

本郷:いいですね。もともと奥州市のご出身ですか?

川島:生まれも育ちも奥州市です。21歳のとき、会社員としてずっとこのまま40年続けるのはムリだって思って、世界一周の旅に出たんです。世の中でどういう人がどう仕事しているのか世界規模で見て、自分のものさしみたいなものをつくりたくって。1年かけて38カ国を周る旅を終えて帰国して、じゃあ自分にできることって?って考えたら、写真とかパソコンとかデジタルなものを使いながら地元の魅力を外に伝えていくことだと思いました。

本郷:実際それを具体的に仕事にしていくことは難しくなかった?

川島:帰国してから3年は盛岡にある企業の販促部門でプロモーション企画とかwebデザインをやってスキルや実績を積んで、そのあとで地元に戻ってフリーランスとして活動しはじめました。

本郷:いまLIVE + RALLY PARK. で展示しているこの『RELIFE』っていう冊子は、川島さんが作ったんですよね? 写真も文章もぜんぶ自分で?

川島:そうです、仲間と一緒に。僕以外はこういう仕事をしたことがない素人の集団で作りました。この仕事は公募だったんですけど、実は僕もそれまで冊子を作った経験はなかったんですが「君できるの?」と言われて「できます」と答えちゃったからやるしかなくて、ファミレスで「このソフトどうやって触るんだ?」みたいなところからのスタートでした。でも、この冊子ひとつがこうしてカタチになったことで、相談が来るようになって仕事が増えて法人化できました。

本郷:公募の仕事でなぜ川島さんたちが選ばれたんでしょう。

川島:メンバーは地元で活動している素人なので身の丈にあった情報発信ができるし、仕事目線というよりは暮らし目線というのもよかったんだと思います。

本郷:移住促進の活動のお手伝いもしているとお聞きしました。

川島:奥州市で始まる「Walk on Soil」という取り組みです。今年地域おこし協力隊としてふたり採用されたんですけど、その人たちの暮らす家を僕が借り上げてですね、みんなでリノベーションしてシェアハウスにしてそこで暮らしてもらおうと、そんなこともしています。

本郷:プロジェクトはどんな内容でしょう?

川島:「小さい旅をつくる」というのがコンセプトです。奥州市のとなり町には中尊寺があるので、これまで「観光といえば平泉(中尊寺)」という感じでした。だけど僕らは、中尊寺などの有名な観光施設より、もっともっと日頃使っているモノとか普段行っているお店がいいよねって思うんです。なので、そういうものを体験してもらう旅をつくっていきたいんですね。

本郷:それめちゃめちゃ LIVE + RALLY PARK. と一緒! 僕たちも、よくある観光名所を紹介していく観光PRじゃなくて、暮らしの中にある日常こそが東北の本当の魅力だよって伝えたいんですよ。

川島:嬉しいですね。例えば、奥州市って小さいエリアですけど伝統工芸品がふたつもありまして、ひとつは南部鉄器で、もうひとつは岩谷堂箪笥と呼ばれる和箪笥です。僕らはこれらは大切な財産だって思っています。これまでは工芸品というと物産展でPRされるものでしかなかったけど、本来暮らしの道具なので、使ってもらいたいんです。古くから続くいいものに生活のなかで触れてもらって本来の魅力を味わってほしいんですね。

本郷:暮らしで使われるから美しくなっていくんでしょうしね。

川島:実際、地域の人たちは本当に暮らしの中で使っているんです。今の時期だと、家庭にはまだストーブが出ているんですけど、ストーブの上にはたいてい鉄瓶があって湯沸かしと加湿の両方の役目を兼ねている。それがふつうの風景なんです。フライパンなどの南部鉄器の調理器具や南部鉄器の風鈴や灰皿はどの家にもありますし、水沢駅では夏になると1000個の風鈴が吊るされて「音だけで涼しい」のを体感できます。

本郷:いいですね、南部鉄器の風鈴、LIVE + RALLY PARK. にも吊るしましょうよ。やりたい!

川島:本当にここに風鈴並べて、それをきっかけに奥州市に来てもらえたら僕らもすごく嬉しいです。駅を降りて風鈴の音が聞こえると「あ、あの音だ!」みたいな。

本郷:他に奥州市の魅力っていうとどんなことがありますか。

川島:休耕田を活用して循環型農業に取り組んでいる農業団体がとても面白いです。食用米ではないお米を作って、そのお米からエタノールを作ります。その過程で出てくるお米の搾りかすは鶏の餌となり、鶏のフンはまた田んぼの肥料となり、お米を育てます。そしてお米からできたエタノールは化粧品や石鹸になるんです。この循環型農業を体験してもらうツーリズム企画も実施していて、海外の方にホームステイしてもらったりしています。海外の方とのコミュニケーションは案外子どもたちの方が大人より上手だったりするので、地域の子どもたちにもいい経験になると思います。

また、「風土・Food・風人」という、食を通じた交流イベントもあります。「風土」は地元の人。「Food」は食べ物。「風の人」と書く「ふうど」は他所から来た人という意味。地元の人と他所の人が食べ物を通じて交流するんです。南部鉄器のOIGENさんが主催で、県内のシェフに地元食材で調理してもらい、みんなで食卓を囲みます。

本郷:南部鉄器のフライパンで野菜を焼いたり、地元食材でパエリアを作ったりしてるわけですね。

川島:そうです。素晴らしいシェフがいて、この方が料理すると地元の食材がめちゃめちゃうまくなるんです。食べて嬉しいだけじゃなくて、地元の農家さんたちや食材を作った人たちもすごく自信が持てるようになるくらい本当に素晴らしいシェフなんですね。

あと、星。星も綺麗です。数年前に公開された『リトル・フォレスト』という映画のロケ地になった奥州市の衣川というところは「星空日本一」に認定された場所。夜はちゃんと真っ暗で、素晴らしい星空を見ることができます。でも、地元の人は興味がないのか、ほとんど行かないです。外から来た人を連れていくと感動して「なんでみんなここに来ないの?」と言われますね。

本郷:わかります。仙台も、定禅寺通りっていう通りのケヤキ並木がすごい素敵なんですけど、みんな歩かない。外から来た人は「この素敵な通りはなに?」ってなるのに。ずーっとそこにいると幸せてって当たり前になっていて気づかなくなっちゃうんですよね。いつもそこに当たり前にあるから。

川島:そこに気づいてくれるのってやっぱり外から来た人なんですよね。

本郷:僕も旅が好きでいろんな街を見ますけど、一回外に出て戻ってくるからこそ地元の良さがわかるっていうのはありますよね。僕らの世代は簡単に世界にも行けるし、外に出たからこそ戻って来て、星が綺麗だな、定禅寺通りって素敵だな、って気づける世代なんじゃないかな。

川島:そうかもしれないですね。僕の活動の根っこには、外で見た景色と自分の地元で見た景色を比べて見て、ああ地元のいいところってこういうところだよねっていう認識ができたっていうところにあるんだと思います。今は周りにもそういう人が増えて来たなあという感じがします。

色々やってますけど、まずは今僕らがやっているカフェと託児所は新しい業態なので、ちゃんと成功したいんですね。そうなることで、もっともっと豊かな暮らしのあるまちにもなっていく思うので、奥州で頑張りたいと思います。

REPORT/那須ミノル(real local Yamagata

SPOT.
Cafe&Living UCHIDA/岩手県奥州市

店内の大きな窓を仕切りにカフェと託児所が併設されており、カフェ利用からでも気軽に子供を預けることができる。
子育てのサードプレイスをコンセプトに子育てを通じて豊かなくらしを提案している。

https://www.facebook.com/cafelivinguchida/

岩手県奥州市水沢区東大通り一丁目5-35