LIVE + RALLY PARK.(ライブラリーパーク)

TALK LIVE/LIVE + RALLY PARK. と東北の観光の未来

2018年3月17日(土)、仙台市勾当台公園の一角に、出会いと交流の新しい広場「LIVE + RALLY PARK.(ライブラリーパーク)」がオープンしました。その開会セレモニーではまず郡和子仙台市長から「ここでさまざまな東北の魅力を感じていただき、ぜひここでの体験をきっかけに東北の各地を巡ってみてください」との挨拶がありました。

続いて、「LIVE + RALLY PARK. と東北の観光の未来」と題したトークセッションがスタート。
東北の観光やまちづくりで活躍しているキーパーソンを代表して、齊藤良太(一般社団法人東北インアウトバウンド連合 副理事長)、東海林諭宣(株式会社See Visions代表取締役)、本郷紘一(Sendai Development Commission株式会社 代表取締役)、天野元(仙台市文化観光局次長)の各氏をお迎えし、東北芸術工科大学の馬場正尊教授がモデレーターとなって、LIVE + RALLY PARK. とは? 東北の観光の現在そして未来とは? といったテーマについて語り合いました。

左より馬場氏、齊藤氏、東海林氏、天野氏、本郷氏。

以下ここからトークライブの模様をお伝えします。

=====

馬場:勾当台公園に突然出現したこのカフェを、なぜ仙台市は作ろうと思ったのか。その戦略とはなんでしょう?

天野:東北の中枢都市と呼ばれる仙台は、大企業の東北支店が集まる場所です。東北にマーケットの魅力を感じている企業が1店舗は出しておきたいという思惑から東北支店を置く場所、それが仙台というわけです。しかし東北地方の人口は900万人を切るまでに減少しており、さらに減少すればマーケットとしての魅力を失い、企業は東北支店を撤退させることになるでしょう。そうなれば仙台も弱くなってしまう。その意味では、仙台は東北に支えられてきた都市とも言えるのです。

東北各地の自治体にお話を伺うと、真っ先にやりたいのは人口減少に対応したい、特に交流人口を増やしたい、ということ。もっと言えば、仙台をひとつのマーケットとして、仙台市民の方々に東北各地に来てほしい、ということなんです。仙台から東北各地にお客さんがたくさん来るようになれば各地が潤うよね、人口減少に対するなんらかのカウンターになるよね、と。

であれば、まずは「仙台市民の方々に東北の素晴らしさをもう一回再確認してもらおう」ということがこの場所の始まりなんです。

馬場:それで、LIVE + RALLY PARK.(ライブラリーパーク)で、東北各地の町々の魅力のショーケースみたいなものを企画するということなんですね。今後、この場所から、東北各地のいろんな場所の、いろんな人の、いろんな出来事の魅力を発信していく、ということ。それが仙台市が仕掛けた大きな枠組みだというわけですね。

それにしても、なぜこの勾当台公園という場所なんでしょう?

天野:東北の各市町村にとってみれば、例えば物産展のようなものはもうおなかいっぱいなんですね。デパードでもどこでもやっている。そうではなく、東北の各地に呼んでほしいのはまた別の客層であり、もっと若い人や暮らし方や生き方といったライフスタイルに興味を持っている熟年世代や高齢者を呼びたい、と。そうすると、今までと同じコンセプトではそういう人たちには訴求できませんから、今までになかった、公共空間としてしか使われなかったところに突如として変なものが出現したらお客さんが来るよね、と。

馬場:公園の中にこういう木造のカフェが突如出現するというのは日本中を見てもかなり珍しいわけですが、この幻のように現れたカフェから、東北の魅力を伝えていこうということなんですね。
じゃあ、この空間では何が展示されているでしょう?

本郷:NORTH JAPAN EXHIBITIONでは、この建物のなかで6県の展示をしています。壁に刺さっているりんご箱に東北各県の魅力的な「人」にまつわるモノが展示されています。また、その隙間を縫うように、東北の暮らしを表現する本や道具、民芸品もあり、手にとって触れたり触ったり体験できる。そこから暮らしのイメージが膨らんで、「ああこの人に会いに行きたいな」っていうようなことになれば、と思っています。そして、ここを人と人が繋がる場所にしたい、という狙いがあるのですが、繋ぐためのコンテンツとなるのがコーヒーです。美味しいコーヒーを介しながら人が繋がっていく、そんなイメージです。

東海林:始めてここに来ましたけど、その土地にいる人じゃないとわからないようないいものが集まっていて、「日常」というコンセプトがすごくいいなあという印象を受けました。私は秋田市でデザイン会社やりながら、30年くらい見捨てられてきたようなエリアにちっちゃな10坪くらいのバルを作りました。カウンターだけのバルなんですけど、ここのカウンターを介していろんな人が繋がって新しい芽が生まれたり、次のプロジェクトが生まれたりということが起こって来ています。さっき本郷さんは「コーヒーで繋がる」っておっしゃってましたけど、私はお酒で繋がっていったんですね。

馬場:コーヒーやお酒というのがコミュニケーションの時間と空間を繋げているんですね。

齊藤:みなさんのお話を聞いていて「視点を変える」というのがキーだと思いました。私が事業で関わるインバウンドでも、日本人と海外の人って視点が違うんですよね。我々がやっているなかで一番のヒットコンテンツとなったもの、一番集客がいいものというのは、仙台でも松島でもないし、雪でも桜でもないし、白石城でも蔵王でもないんです。観光ではなく、民泊なんです。民泊こそが最高のコンテンツなんです。人に触れ合って、日本のごはん食べて、こたつ入ってみかん食べてっていうことが、どこにいっても経験できないものであると。これこそがヒットコンテンツなんですね。まさに日常です。

馬場:観光って、光を観るって書くけど、観るだけじゃなくて、そこで具体的に話ししたりコミュニケーションしたりっていう日常のリアリティが求められているんですね。

齊藤:「THE 観光」みたいなコンテンツは日本全国どこにでも同じものがありますから。でも観光客は、そうじゃなくて、そこにしかないものを求めているんですよね。

馬場:もしかするとそれは外国の人だけじゃないかも。僕らだって、この東北の日常の魅力をまだ知らない可能性はたくさんある。そういう気づきがこのLIVE + RALLY PARK. から生まれてくるといいですね。

ところで、そもそも「LIVE + RALLY PARK.(ライブラリーパーク)」ってどういう意味なんでしょう?

本郷:ライブって「暮らし」ですよね。暮らしを集めて人が繋がっていくというような意味合いで、ライブをラリーするから、ライブラリー。勾当台公園という広場が、人と人とが繋がり何か新しいものが生まれる広場であるように、という意味を込めて名づけました。

馬場:スペルは違うけど響きが「ライブラリー」だから図書館ですよね。暮らしの図書館みたいなイメージなんだな。

本郷:実際に本も並んでいますし、購入もできます。選書もすごくこだわっていて、大きな本屋では絶対に手に入らないようなリトルプレスの小さな出版物とかZINE※とか、ペンギン文庫さんにディレクションしてもらって、東北各県にちなんだものを準備しています。

馬場:ここでしか手に入らないような本やローカルメディアを並べている、と。あとはこのNORTH JAPAN EXHIBITIONではこうして屋台が並んでいますが、この屋台について説明を。

本郷マルシェでは東北6県の人にフォーカスして、面白い働き方をしているお店さんや人を呼んでいます。是非みなさん、出店者の方々に話しかけてみてください。人との出会いがテーマですから。

※ZINE ジン。自身の写真や絵や文章などの作品をプリントアウトして作る小冊子のこと。

馬場:ここを、人と人とが出会う公園のような場所に見立てているわけですね。仙台市はパブリックスペースに対していろんな仕掛けを持っていますが、その中におけるこのLIVE + RALLY PARK. の位置付けとはどういうものでしょう?

天野:人口が減少するなか、新しい開発をすることがいいのかそれとも古い建物を利用した方がいいのかっていう時代になりました。新しいビルを建てちゃうと賃料が上がっちゃって、若い起業家がビジネスできないですよね。家賃を抑えるためにはやっぱり古い建物をどうにかして生かしてやることも重要で、仙台市内にもそういうリノベーション物件がだいぶ増えました。

じゃあ次にはどこにフロンティアがあるのか、まだ利用され尽くしていない場所はどこにあるのか、というと、こういう公園や道路なんです。道路はすでに渋滞率が下がり、自動車に乗らない人が増え、車の台数も減っています。そういう状況なのに今まで通りの太い道路のままでいいのか。もっと道路を利活用できるようにしたらいいんじゃないか。例えばパリのカフェのように、歩道の上にオープンカフェがあったっていい。それをじゃあ仙台でちょっとやってみようか、っていうのがまさにこのオープンカフェ状態の、まさにこの空間なんですね。

馬場:確かにヨーロッパのパリなどでは、路上にテーブルや椅子があってそこでご飯食べたり時間を楽しんだりという風景がありますよね。でも日本の場合は、道路にはみ出ていろんなカフェとかテーブルがあったりするのは今のところダメなんですよね。だけど、仙台市としては今後、こういう道路や公園みたいなところでも、今日の皆さんがこんな風に佇んでいるような風景が街中に広がっていくような施策があるということなんですね。こういう風景が、日常の風景として定着する。そういうイメージがあるということなんだなあ。

天野:それもね、テーマは人との交流なんです。こういうところで知らない人同士が出会うことを通してクリエイティブな何かが生まれてくるはずです。

本郷:ぜひ皆さん、見知らない隣の人にも声をかけてみてください。そういう場でありたい、ということですね。秋田では東海林さんも道路を隔ててお店をやったりして、店だけに閉じこもらない店をやっていますよね。

東海林:道路にはみ出てお酒を飲んだりするっていうのはみなさん日常的にやれないことですよね。それができるというだけで楽しくてみんな利用してますね。僕のやっているところでは、夏になるとみなさん道路に座り込んでお酒を飲んでいるんですけど。それはもう特等席みたいになりますよね。

馬場:道路の縁側みたいなところでお酒飲んでいるんだ。いいですよね。こういう半分外の場所に腰掛けてコーヒー飲むのってすごく自由ですよね。都市を楽しんでいるみたいなイメージがあって。今後、公共空間とかマルシェとかやるんですか。

東海林:そうですね。お客さんたちが街を楽しんで作って行ってくれているような感じで。

馬場:まさに街の文化をお客さんと一緒に作って行っていると。この場所もLIVE + RALLY PARK. ができたことによって、あまりこれっていう特別な感じのイメージがなかった勾当台公園が、ちょっと文化の匂いがする公園になるような気がします。まさにそういう仕掛けですよね。斎藤さんも、丸森町でお店をやって新しい仕掛けをしていますよね。

齊藤:我々、提供するサプライヤー自身が視点を変えて変わっていかないと、お客さんに受けるコンテンツは作れないと感じます。そのままでいいじゃん、事なかれでいいじゃん、現状のままでいいじゃん、町を変えなくていいじゃんっていう状況に、地方に行けばいくほどなっちゃっているんじゃないかという気がします。地方ほどプレーヤーも少なくて、イノベーティブじゃないんです。それはインバウンド以前の問題というか。だから、ど田舎で、ただ単におしゃれなお店でおしゃれなものを提供しているだけじゃダメで、地場の農家を応援しながら6次化してジェラード作って売ったりとか工夫しています。

馬場:田舎にめちゃくちゃおしゃれなお店をバン!と作ったわけだよね。それをあえて丸森でやったっていう。まさに東北の新しい日常を作っているわけですね。仙台におしゃれなジェラード屋だったらあまり話題にならないかもしれないけど、丸森だからこそ話題性があったのかもしれないですね。今後、そのジェラード屋さんをきっかけにエリアにどうアプローチして行くんでしょう?

齊藤:町の中に閉じた動きになりつつあるので、これからはどんどん外に発信して行って、丸森っていうブランドを都市や海外にアウトしていかなきゃいけないですね。それによって町の人の意識も変わり、マインドが醸成されて行くはず。新たな動きとして、地域商社みたいなことをやって、丸森ブランド全部をひっくるめて、観光も物産も全部ひっくるめて売りまくろうと思います。

馬場:新しい地方都市の産業の作り方、みたいなものかもね。観光もプロモーションもやるけど、その最初の拠点がジェラード屋さん。そこのリアルから始まっているのは力強い感じがしますね。

齊藤:このLIVE + RALLY PARK. はとてもいい場所で、人も集まりますよね。私はお祭りが好きなので、フェスみたいなお祭りをここでやりたいですね。みなさんご存知の七夕祭りとか大きな祭りじゃなくて、地域の小さなお祭りって地域の中に閉じていてあんまり外の人は知らないような、そういう小さな地域の祭りをここに持ってきて体験できるみたいなことやれたらいいなあと思います。

天野:このLIVE + RALLY PARK. はこれから夜も楽しめるようになるといいですよね。ビールもあるし、ワインもあるし。19時とか20時とか、仕事帰りの道ゆく人たちがここに集まって平日に飲んでいるみたいな日常を作りたいですね。あとは、妄想かもしれないけど、5年後くらいには、仙台の至る所でこういうように路上でみんなが楽しんでいる。そんな始まりがここだといいですね。

馬場:いいですね。みなさん、想像してみてください。夏の夕刻、仕事帰り、この辺に座りながら、出会った人と話ししながら、ビール飲んでいる場面を。理想的な街の風景かもしれないですね。なぜか日本の都市は、路上で飲み食いしちゃいけないかということをずーっと続けて来た。でも、本来、昔日本が持っていたはずの豊かな都市文化というものをずーっと失って来たのかもしれないんですよね。

このLIVE + RALLY PARK. というのはその古くて新しい都市の文化をもういちど手に入れて実験するような場所であろうとしているのかもしれませんね。

本当に5年後の仙台でこの風景が見られるのなら、その始まりは今ここのこの瞬間なんだろうと思います。

REPORT/那須ミノル(real local Yamagata