LIVE + RALLY PARK.(ライブラリーパーク)

TALK LIVE/亀の町で生まれた新たな日常

2018年3月17日、LIVE + RALLY PARK. (ライブラリーパーク)で開催された「North Japan Exhibition 東北 暮らしの展示会」では東北のキーパーソンによるTALK LIVE(全7回)が行われました。秋田の東海林諭宣さん(株式会社See Visions代表取締役)をお迎えし、LIVE + RALLY PARK. の仕掛け人のひとりである本郷紘一さん(Sendai Development Commission株式会社代表取締役)と馬場正尊さん(東北芸術工科大学教授)が聞き手となったトークライブ第2弾のテーマは「亀の町で生まれた新たな日常」。気持ちよい春の陽ざしのなか、だけどまだちょっと寒い春風が吹くなかでの縁側トークとなりました。

以下、その模様の一部をお伝えします。

===

左から、馬場氏、東海林氏、本郷氏。LIVE + RALLY PARK. の縁側にて。

馬場:東北6県からいろんな人を招いてまったりと昼下がりのトークをしていきます。秋田から東海林さんにおいでいただきました。
まずは東海林さんのお仕事について、そしてなぜ秋田にいるのかを教えてください。

東海林:秋田市から来ました株式会社See visions というデザイン会社をやっています東海林です、よろしくお願いします。実家は秋田の美郷町のコメ農家で私はその21代目の長男。東京へ行くときには親から強く反対されて「必ず帰ってきます」という血判状みたいなものを書かされたんですね。なので、東京で仕事をするようになってからも「いつかは秋田に帰る」とは思ってました。

でもいざ帰ったら、秋田県は少子高齢化の先進県で人口減少率No.1で自殺率No.1で婚姻率もワーストで、と悪い話ばかり。だったらデザイン会社やりながら自分の周りだけでも楽しくしていこうと思って秋田市の亀の町というエリアで2013年から飲食店をやり始めて、1年に1店舗ずつ店を増やして、2015年には3店舗目を作って、町を面白くしようとやっているところです。

馬場:なんでデザイン事務所なのに、飲食店やろうと思ったんだろう?

東海林:東京の頃からずっと飲食店の店舗デザインの仕事に携わってきて、200店舗ほど仕事をしてきて、お客さんに「こうしたほうがいいよ」なんてアドバイスしてきましたけど、実際には自分では一回もお店をやったことがなくて、どこか後ろめたいところもあって、「一回自分でやってみたい」という気持ちがあったんですね。

本郷:デザイン会社の人が飲食店をやるってすごく幅がありますよね。僕も美容室やってたのに突然珈琲屋をやりはじめたら周りから「なんで?」って言われたけど、東海林さんはなんで飲食店、それもバルですよね? なんでバルだったのかな。お酒が好きでした?

東海林:お酒はもう、毎日飲んで、毎日二日酔い。

本郷:日常にお酒があってお酒が好きだから、お酒で人と人を繋げよう、と?

東海林:そうですね。秋田県はアルコール摂取量全国2位というくらい、とにかく酒を飲む文化。カメバルというその店はカウンターの店なんですけど、とにかくお客さんたちのコミュニケーションが生まれるんです。人はカウンターで繋がるんですね。

本郷:それ、よくわかります。カウンターじゃないと社交場になりづらい、というか。カウンターで繋がるコミュニケーションってありますよね。それまで亀の町にはそういう場所がなかった?

東海林:それまでの亀の町って賑わいがある場所じゃなかったんですね。だけど店を作ったらそこに賑わいが生まれた。今はもう空き店舗がないくらい。

馬場:そこではどんな会話や出会いが生まれているんだろう?

東海林:私は、自分のいるエリアにこんなのあったらいいなーっていうショップを見つけてくるリーシングとかディベロッパーみたいなこともやってるんです。で、店はそういうプレーヤーを見つける場所なんです。店で出会って「ちょっとうちの近くでショップやんない?」みたいな会話をいつも交わしてました。

本郷:不動産屋みたい。じゃあ、パン屋さんが欲しいと思ったら。。。

東海林:バーのカウンターで知り合って、横に座って、リーシングする。僕らのいるビルに入っているお店は全部そうやって集めました。

馬場:全部?!

東海林:全部です。今まで公募したことがない。今のビルにはクラフトビール屋とかカフェとか税理士事務所とかイベント会社とかデザイン会社が入ってまして、次は200坪の倉庫をやるんですけど、そこには家具屋、建材屋、壁紙屋、雑貨屋、美容室、花屋、調味料、スーパー、建築設計事務所が入りますけど、それも全部。

馬場:すごい。

東海林:無計画のようだけどちゃんと「暮らし」とかコンセプトだけは決めて、それに合うテナントが全部バーのなかで決まっていく、という。

本郷:そんなにたくさんのプレーヤーが集まるんだ。

東海林:やっぱりみんなお酒を飲むと夢を語り出すんですよね。夢を語り出したところで「じゃあやろうよ!やってみようよ!」と。

馬場:あの亀の町の築50年くらいの古い木造の長屋をバーにしたところから、すべてのこの町の変化が始まったということなんだね。

東海林:あそこはずっと空き物件だったんですが、もともと雰囲気はすごくいい場所だったんです。僕はお店を作るのが仕事だから、最初はお客さんを連れていって「ここでお店やらない?」って誘ったんだけど誰もやりたがらなかった。なら自分でやってみるかと自分でリノベして、お金をかけずにこんな風にやれるんだよっていうのを見せようと思って。

馬場:それ以来、町の雰囲気やその場所の見られ方はどんな風に変わったんだろう?

東海林:そのカメバルという店ができた2013年当時のエリアの物件の取引件数は年間4件だったのが、2016年には4倍の16件になり、空き店舗もなくなり、それまでいなかった若い人も増えました。僕たちが関わった物件以外の場所でも面白い人たちが集まってきて、若い人たちが古い家を直して住み始めたり、イベントやったりしています。

馬場:僕も秋田ではカメバルに行くのが楽しみなんだけど、道の縁側みたいなところに座って、ビール飲み始めて、初めて会う人と仲良くなって普通に話しだす。そういうことが本当に起こるんだよね。仙台にはそういう日常があるのかな。。。

本郷:マルシェとかイベントを非日常的に作ることはできるけど、今まさにこのLIVE + RALLY PARK. でみんなが集まってマルシェやったりコーヒー飲んだりっていう風景をこれから日常化したいんですよね。

馬場:こういうマルシェや亀の町の風景を見ていても、小さくて個人の顔がはっきり見えるお店が集積している状況ってめちゃくちゃいいよね。かつては「なんとか商店」という人の名前がついているお店があって、その人の顔で商売をやっていて、そういう店が集積しているのが都市だったんだけど、いつのまにかシステム化されてチェーン化していって、匂いのない、キャラクターの薄い町になっていった。でも改めて眺めてみると、僕らが欲しい街の姿というのはこういうマルシェみたいなものが広がっている風景だよね。

東海林:そうですね。

馬場:僕は東海林さんや本郷さんよりちょっと上の世代で、ローカルから東京へ出なくちゃいけないなっていうなかで育った世代なんですよね。でもお二人の世代になるとまたもうちょっと違って、地域に残ってしっかり仕事をすることがかっこいいと思えるようになって来ている気がして。それを素直にやっているおふたりがすごく羨ましいなと思います。東京だと何をやっても埋没するし。このLIVE + RALLY PARK. だって東京でやったら埋没するけど、仙台市役所の前の勾当台公園でこれができたってことはすごいニュースだし。東海林さんだって亀の町をああいうふうに変えて、今やすごく注目されている存在だと思うし。

東海林:僕は今やっているのと同じスキームでこれからも一生懸命やって、古い建物で困っているオーナーさんと自分でやりたいプレーヤーさんたちを繋ぎ合わせて、できる範囲を広げていきたいですね。

馬場:亀の町でやって来たトライアルを、亀の町以外でもやっていきたい、と。

東海林:そうです。

馬場:もう職業がわかんなくなって来たね。

東海林:そういうことをやっていったほうが地域の人が幸せになるし、楽しいだろうなあと。

馬場:エリアリノベーションを進める上での最大の発見は、今まで全然語られてこなかったけど、まちづくりの重要なファクターとしてグラフィックデザイナーの存在があるってこと。建築のデザインと同じくらい重要な存在としてグラフィックがある。建築って結構時間がかかるけど、どんどん新しい情報や新しいデザインを発信していけるのがグラフィックデザイナーなんだよね。東海林さんはそこをエンジンに持っているのがいいと思う。

東海林:馬場さんの「エリアリノベーション」の重要なファクターには、不動産とグラフィックと建築とメディアという4つがあるわけですけど、たまたまうちの事務所にはこの4人がいたんですよね。だから色々と展開できたのかもしれないですね。

馬場:不動産とグラフィックと建築とメディアがやれる事務所って、もうグラフィックデザイン事務所じゃないよね。それは新しいプロダクションの姿だと思う。新しいプロダクションというのは何かのひとつの領域に固まる必要は全然なくて、横断的なキャラクターによるクリエイティブ集団として圧倒的な求心力とドライブを持っているんだね。東海林さんはきっと、新しいデザインのクリエイティブエージェンシーの作り方を、なんとなく地でやってきたんですね。

 

REPORT/那須ミノル(real local Yamagata