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気仙沼市/つながりの酒をつくる

 

海と大地とつながる酒

宮城県気仙沼の酒蔵である私たち男山本店がめざすのは、華やかすぎる香りを強く漂わせるような酒ではありません。それでは、鰹やまぐろ、秋刀魚といった、目のまえに広がる海で水揚げされた新鮮な海の幸の味わいを邪魔してしまうことになりかねません。そうではなく、めざすのはむしろ柔らかく控えめでありながら、地元の旬の海産物の繊細な旨さをそっと引き立ててくれるような、そんな絶妙なバランスの美味しさなのです。

つくる酒によって兵庫県産の山田錦を使うことも長野産の美山錦を使うこともありますが、私たちがいま力を入れている酒米は、宮城生まれの「蔵の華」です。とくに、地域の契約農家の方たちにつくっていただいたこの酒米と、荒神湧水と呼ばれる地元の軟水を原料にして、このまちの自然の風景そのままのような酒づくりというものを私たちはめざしています。

私たちの酒づくりとは、つまり、気仙沼のまちの素晴らしさを発信するということなのです。

 

飲んでくれる人とのつながりを感じて

東日本大震災のあと、私たちは、お客さんとのつながりを大切にした酒づくりというものをそれまでよりもずっと強く意識するようになりました。

あの震災のとき、私たちはそれこそ日本全国津々浦々の本当にたくさんの方々から励ましのお手紙やメールをいただきました。それまでは「売ってしまえば終わり」と考えていたところも多少はあったかもしれませんが、それをきっかけに、つくり手である私たちと飲み手であるお客さんとの関係というものは決してそうではないんだということを学びました。

以来、顔の見えるくらいの距離にいるお客さんとの関係を大切にすることや、そうしたお客さんとのコミュニケーションを深化させることが大切なのだと、私たちは考えるようになりました。

 

地域の人たちとのつながりに支えられて

震災のとき、男山本店の社屋兼店舗は津波によって倒壊しましたが、酒蔵はなんとか生き残りました。酒蔵のタンクには、奇跡的に、主力ブランドである「蒼天伝」の醪(もろみ)が生きていました。
私たちは震災の翌日から活動を再開しました。電気もガスも水道も止まっている状況でしたが、そんななかで私たちが酒づくりをつづけることができたのは、それを支えてくれた地元の方たちがいたからでした。醪を絞る作業をおこなうときには、発電機を貸してくれた人がいました。
配線をするために避難所から駆けつけてくれた電気屋の人も、トラックを出してくれた人も、ガソリンを分けてくれた人もいました。被災した地元の人たちが「生き残った生産施設なんだから頑張れ」と、私たちの元に駆けつけ、力を貸してくれました。だからこそ、私たちはその生き残ったタンクから1600本の蒼天伝をつくりきり、全国に発信することができたのでした。

地域の自然に支えられ、たくさんの飲み手のみなさんに支えられ、そして地域の人たちに支えられて今の私たちがあるのだということを感じながら、これからもいい酒をつくり、届けていきたいと思います。

株式会社男山本店 代表取締役 菅原昭彦

 

photo : Kohei Shikama
text : Minoru Nasu

SPOT.
男山本店

1912年、男山本店は日本有数の港まち・宮城県気仙沼に創業いたしました。以来、美しい自然と新鮮な魚介に恵まれたこの地で、100年以上にもわたって酒造りの歴史を刻みつづけてまいりました。これからもずっと、海と空とが蒼く蒼く染まるこのまちの風景のような酒を、造りつづけてまいります。

社名:株式会社 男山本店
所在地:〒988-0083 宮城県気仙沼市入沢3-8
http://www.kesennuma.co.jp