LIVE + RALLY PARK.(ライブラリーパーク)

盛岡市/好きな街で本屋になる

早坂大輔さんの本屋BOOKNERDは、盛岡市紺屋町にある。
20分ちょいかかるが、盛岡駅から歩いていける。駅前の通りから北上川を渡り、アーケード街も通り越し、役所がいっぱい並ぶあたりのまた先の盛岡城跡公園をかすめて中津川を渡ってたどりつく。かつて商人のまちだったという紺屋町はいまでは歴史と文化を静かに感じさせる。BOOKNERDはその一角に、やっぱり静かに佇んでいた。

店に入ると店主の早坂さんが静かな声で「いらっしゃいませ」と声をかけてくれた。いい音楽が流れていた。

早坂さんは2017年秋にこの店を開けた。
それまで長く求人広告の仕事をしてきた。秋田で、また仙台で、盛岡で、サラリーマンとして、また起業してからは経営者として、ずっと長いこと携わってきた。が、あるとき、一生やる仕事じゃないな、と思った。もっと自分の好きなことでこれからの人生を送りたい、好きな音楽で、好きな映画で、好きな本で生きていこう、そう思った。それで本屋になった。それまでこの街には独立系の本屋がなかったのも本屋を選んだ理由のひとつだった。

本屋になると決めたら大好きなニューヨークへ飛んで、街中を巡りめぐった。気になる店に入ったり、気に入った本を買いつけたり、たくさんの本屋をぐるぐると見て回った。そうして自分がやりたい本屋のすがたをかたちにしていった。

BOOKNERDには新品本のほか古書も洋書もある。雑貨もある。ときにはギャラリーとなって展示も行う。いい音楽がずっと流れている。キュレーションこそ独立系本屋の醍醐味だ。並んでいる本の数は決して多くないというのに、この店のなかは本への愛着にあふれた濃密な空間になっている。

盛岡生まれでも盛岡育ちでもない早坂さんがこの街で商売をしこの街に暮らしているのは、この街のことが好きになってしまったからだ。

歩けばだいたい好きなところへ行けるという街のコンパクトさも、文学やアートや文化の香りが漂うところも、「クラムボン」という大好きな喫茶店のそばでお店をやれていることも、とても気に入っている。

すごく儲かる、というタイプの商売ではない。けれど、それなりにいい給料をもらうという生活の先にはなにもなかったことを知ってしまったから、この本屋にたどりついて現在がある。

好きな本に囲まれて、好きな音楽をかけて、好きなお店をやって、仕事が終わったらビールを飲む。そのくらいの幸せの大切さを感じながら、今日もBOOKNERDにいる。

 

関連記事:TALK LIVE/LIFE WITH BOOK, BOOK WITH LIFE

text & photo:那須ミノル(real local yamagata)

SPOT.
BOOKNERD

『BOOKNERD』は店名の通り、『本オタク』の店主がキュレーターとなり、自らアメリカで買い付けてきた世界中のビジュアルブックや写真集、絵本や国内外の文学、エッセイをセレクト。現代の感覚でデザイン的に、視覚的に優れていると認識したものを国内・海外問わず店主がキュレーションし、取り揃えます。1950年代~2000年代までのクラシック、マスターピースを取り揃え、多くの方の知的好奇⼼を喚起したいと考えています。また本のある生活に馴染む感度の高い雑貨も取り揃えております。標榜するのはアメリカに幾つも点在する個性あるブックストアです。

岩手県盛岡市紺屋町6-27
http://booknerd.jp