LIVE + RALLY PARK.(ライブラリーパーク)

TALK LIVE/まちの中の界隈 

2018年10月20日、LIVE+RALLY PARK.(ライブラリーパーク)で開催された「North Japan Exhibition 3」では東北のキーパーソンによるTALK LIVE が行われました。

今回は、盛岡市から早坂大輔さん(BOOKNERD店主)と、日下和彦さん(仙台市文化観光局東北連携推進室企画担当係長)、福田圭祐さん(同 主事)をお迎えし、ライブラリーパークを企画・運営する本郷紘一さん(Sendai Development Commission株式会社代表取締役)と馬場正尊さん(OpenA代表・東北芸術工科大学教授)モデレーターとなって、「界隈」をテーマにトークを繰り広げました。

以下、その模様の一部をお届けします。

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左より、日下さん、本郷さん、馬場さん、早坂さん、福田さん

 

本郷:よろしくお願いします。みなさん自己紹介から、どうぞ。

馬場:本郷さんと一緒にSDCという会社をやりながら、この Live + Rally Park.(ライブラリーパーク)の企画も一緒にやって、この後ろにあるカフェの企画と設計を担当しました馬場です。東京で設計事務所をやり、山形の東北芸術工科大学で建築を教えながら、いろいろやってます。よろしくお願いします。

早坂:岩手県盛岡市から参りました、BOOKNERDという本屋をやっています早坂です。新しい本もあれば古い本もあるし、洋書もあれば和書もあるし、自分のフィルターを通した本と雑貨だけを置くというスタンスでやっております。よろしくお願いします。

福田:仙台市の福田です。ライブラリーパークの行政側の実務を担当しています。ここは東北の新しい魅力の発信、新しい観光の在りかたを民間の方と一緒に考えながら実験していこうと始まったわけですが、NORTH JAPAN EXHIBITIONというこのイベントも3回目となり、とても多くの皆様にこの公園に愛着を持っていただけたと感じています。

日下:仙台市で東北連携推進室の係長をしております、日下です。このライブラリーパークは、東北の魅力を広く発信する拠点として1年の実験的な取り組みとして3月にスタートしました。施設内では東北の民芸品や東北にまつわる本や東北の食材を使った食べ物などを販売し、2週間に1回くらいのペースで東北の自治体の皆さんに発信してもらいました。本日はどうぞよろしくお願いします。

本郷:早速「界隈」について議論しますか。

馬場:本郷さんとBOOKNERDさんとの出会いがこの企画の象徴のような気がするので、まずはふたりがどうやって出会い、この企画に結びついたのかということを聞いてみたいですね。

本郷:盛岡にBOOKNERDという、訳すと「本のオタク」というお店があると聞いて訪ねて行って、早坂さんにお会いし、お店素敵だなーと思って買い物したんです。で、「仙台でマルシェやっているので一緒にやりませんか」とオファーすると「いいよ」って返事もらって。時間もあったので「この後どこ行ったらいいですか」って聞いたら「ここいいよ」って教えてもらって。そしたら店内にいた青年がそのお店に行く予定があるから一緒に行きましょうって連れて行ってくれたんですね。

馬場:地元の人がガイドしてくれたんだ。

本郷:そう。で、青年に付いて行くと川原に入っていくんですよ。そこに店があるんです。そんなところにある店見たことないから「なんだこれは」ってドキドキしながら中に入ったら素敵なテクスチャーの洋服屋なんです。買うつもりなかったのに色々買っちゃって、じゃあ次どこ行こうかと思ったら、焼肉屋さん紹介されて「じゃあそこ行くか」って思ったけど、川原が気持ち良すぎるから店の前のベンチで座ってたら、店長さんが出てきて「コーヒー飲みます? 淹れますよ」って淹れてくれて。まるで予想してない体験を連続でさせてもらったわけです。この体験は観光本には絶対載ってないし、早坂さんとその地元の人しか知らないようなローカル体験なんですね。これこそ「新しい観光」と思いましたね。

馬場:そうかー。

本郷:それがヒントになって「あそこが早坂さん界隈だ」と閃いて。だから次のテーマは「界隈」だと決めたんです。

早坂:盛岡というまちの規模が関係してますね。商圏が小さいので、まち歩きしやすいんです。隣接するお店に歩いて行けるし、喫茶店もたくさんあって移動も容易にできる。なおかつ地元の人しか行かないような濃いめのお店に行ってもらったので、盛岡ならではの体験をして頂けたんだと思います。

本郷:青年が気さくに道案内をしてくれて。仙台では体験したことのないものでした。

早坂:旅行者の方がいらっしゃったときには、僕もよくやります。盛岡のことをできるだけ知ってもらいたいので、自分の好きなお店を「巡られてはどうですか」と紹介します。観光案内所的な役割は持とうと自分なりに意識していますね。

馬場:ライブラリーパークのテーマってまさに「東北の日常を旅する」。それを本郷さん自身が感じちゃったわけですね。

ぼくは九州出身で、東京で仕事していたけど、東北に通うようになってからは東北の色んな所に行くようになって、それでわかったのは、東北の人って人見知りだけど、一回なにかのきっかけで知り合いになったら、照れながらもものすごく世話を焼いてくれたりする人の良さがあるってこと。それこそが東北の魅力であり、観光の最大の価値のような気がするんです。

きらびやかな建物はないけど、そこにいる一人ひとりの味わい深い人格とか、その人がやっている店とか、その人がしてくれる小さな説明とかにすごい魅力がある。そういうものをなんとか伝えられないかなと思ったのがライブラリーパークの企画のきっかけでもあったんです。

早坂:東北人は奥ゆかしいですよね。初対面で打ち解けることはないけど、懐に入れば手厚くもてなしてくれる感じがします。

馬場:奥ゆかしさを観光で表現するってめちゃくちゃ難しいですよね。

日下さんにお聞きしたいんですけど、いわゆる行政が仕掛ける観光って、きらびやかなものになりがちですよね。だけど、今回のライブラリーパークはそうじゃなくてもっと違う観光があるんだって感じで色々やってきましたけど、それについてどうお感じでしょうか。

日下:確かに「観光」というと馬場さんがおっしゃったように名所巡りを皆さんイメージされると思いますが、いま注目されているのはローカル体験、体験型コンテンツなんですね。つまり、その地域の人々の暮らしを体験する、というのが流行っている。特に旅慣れた外国人観光客はまだ行ったことのない地域を体験したいと考えているようです。インバウンドと言われる外国人観光客が日本では増えていますが東北には日本全体の1%しか来ていないんです。

馬場:1% ?

日下:東北には 2度目3度目に訪れる外国人が多いんです。そこをターゲットに体験型コンテンツを提供していこうという動きを仙台市では今年から始めています。だから、本郷さんたちから「日常を旅する」というテーマが出て来たとき、いいテーマだと思って震えたんです。観光じゃない、これまでとは違う観光として、東北の日常を感じてもらうことが今後の東北にとっては一番の強みになるかな、と。

本郷:早坂さんのお店に行って感じたのは、欲しいと思った暮らしをすでに実現されていたり、したい働き方を実現されていたりしているんです。で、その体験が欲しいから僕らは出向いて遊びに行っちゃう。それが観光ですよね。観光地を巡るよりも、まちの界隈を歩いてた方がずっと面白いんですよ。

早坂:その「界隈」という言葉を紐解くと「面」ですよね。点ではなく面で巡るイメージ。先ほども言った通り、盛岡は徒歩とか自転車で巡れてしまう距離なんです。なので、わりと界隈性を出しやすい。スモールショップの皆さんも個性が強いので、紹介もしやすい。一方で仙台は、個性の強いお店はたくさんありますけど商圏が大きいから界隈性を出しにくい。盛岡と仙台ではそういう違いはあると感じます。

馬場:都市ごとの役割の違いもあるけど、仙台から見て盛岡がうらやましいところもありますよね。仙台って巨大だからどうしても抽象的になってしまうし。

福田さんは、東北の中における仙台のまちの役割や位置づけをどういうふうに考えて今回のプロジェクトを企画したのでしょう?

福田:私たちのミッションとして「東北各地域のためになるようなことを仙台がやる」ということがありました。そのための事業を色々展開しているなかの一つにこのライブラリーパークがあるんですね。仙台は東北の他都市に比べて経済規模が大きく人の行き来も多いので、仙台を訪れる方々にいかに東北を色々巡ってもらい交流してもらうかというのが大きな目的でした。

馬場:今回はNERD的なものが集まってしまったわけですけど、これについては。

福田:「NERD」とか「界隈」というテーマでやってみて、これまでこういうイベントに来なかった方々が来てくれて、ここでただ物や食べ物を買って消費するというのではなく、人と話したり交流することに喜んでいるのだと感じました。こんなふうにテーマに特化して、コミュニケーションが得意な方々に出店していただいたのは大きな成果だったと思います。

馬場:「観光」というテーマのわりに、実はディープにディープに行こうとしてましたよね。

本郷:「観光」という言葉に囚われたくなかったんです。これまで散々発信されてきたし、作れてきたから。観光じゃない観光を再発見する、ということをやらないとと思いました。だから自分たちなりのフィルターを通して、センサーに引っかかった人たちにアタックしてみて「なんか一緒にやりません?」とか「この場所使って」とか言ってたらいろんなことが起き始めた。ぼくはコーヒー屋をやってるんですけど、早坂さんと出会ったおかげで盛岡に出店することができましたし。

早坂:そうですね。ありがとうございます。

本郷:早坂さんはMORIOKA BOOK CAMPっていう泊まれるマルシェを企画してくださって。

早坂:盛岡市中心部の大きな公園で、キャンプや本に関わるイベントを企画したんです。MORIOKA BOOK CAMPと銘打って、本屋さんに集まってもらって、本を販売したり、子どもたちに読み聞かせしたり、本にまつわるトークイベントをしたり。アウトドアメーカーさんも参加していただいて、テント張って宿泊もできるようにして。

馬場:公園に泊まるってめちゃくちゃいいよね。ぼくも沼津で公園に泊まれる「INN THE PARK」っていう施設を運営してるけど、今ものすごい人気。

日下:今年のツール・ド・東北ととりすましてきたのですが、石巻の会場となった大学のグラウンドにテントで宿泊できる「CAMP VILLAGE」という取り組みがありました。本来泊まる場所じゃないところに泊まるってすごいワクワクしますよね。

早坂:公園って日常的に利用するものだけど、そこに泊まるっていう体験は日常のなかの非日常みたいに感じられてすごく良かったです。

馬場:公園って夜になると真っ暗で、そこに泊まるというのが都市のなかではすごく貴重な体験になるんですね。都市の見え方が違ってくるし。日常の塊のような場所だからこそ、泊まるとすごい思い出になる。

 

本郷:公園ということで言えば、今日はここも定禅寺通りもジャックしてマルシェを開催しているわけです。こういう公園の使い方をもっと日常的にできればいいですよね。ライブラリーパークというこの施設も、社会実験として仙台市さんと一緒にやってきて、あと3ケ月で解体になりますけど、ぼくはこれを作ってほんとに良かったなと思うんですよ。

早坂:界隈性を表現する場所として、ここはいいですよね。仙台市という大きな都市だからこそ分散してしまっているまちの魅力を集中させて表現することができるんじゃないか、その可能性を持っている施設なんじゃないかという感じがします。

馬場:ここは全部の扉が開いた舞台になってますよね。ここでタップダンスを見ることもできるし、バンドの演奏も聞けるし、今日はこうしてぼくたちがトークしている。つまり、ここは舞台装置なんですね。都市のなかの屋外劇場、シアターみたいな場所なんです。仙台にこそなくてはならない公共空間って、東北中からいろんなものが集まる劇場のことだったんですね。

早坂:本郷さんは東北中から面白いことをやっている人たちを集めて編集したわけですけど、仙台が東北の大きな経済を担う場所だからこそ、そういうことが出来る場所なんじゃないかなと思いました。

馬場:発表の場所なんだね。

日下:劇場として仙台を使って東北を発信する、というコンセプトはとても明確ですね。今回のライブラリーパークの取り組みは1年間の実験でしたけど、我々はこの実験をきちんとまとめて、夢の続きを何らかの形でできないか考えていきたいと思います。

福田:今お話を聞いていて、仙台は公園がまちなかにたくさんあるので、例えば市役所が近いこの公園にLIVE  + RALLY PARK. のような施設があるように、公園ごとにテーマ性のある施設やプログラムが日常的にあれば、公園がそのエリアの界隈を体験するような場所にもなりうるんじゃないかという感じがしました。

本郷:何もないただの空間にしておくのではなく、体験がある公園のほうが絶対いいと思うんです。経験があり、ドラマが生まれ、子供がいて、大人がいて、憩いがある、とか。そこで人と人を繋げるのがコーヒーだと思ってぼくはコーヒー屋をやっているし。それが本でもいいし、それぞれの表現があっていいし、タップでも音楽でも色んなことを詰め込めるのがこのライブラリーパークだと思うんですよね。

馬場:ここで実験してきたことって、公園自体が舞台でありプレゼンテーションの場になっているんだってことだね。さらに経済活動が起こり、どんどん繋がっている。しかも、それは全部こっちから仕掛けたわけじゃなくて。

本郷:やりたいって言ってくる人がいるんですよ。

馬場:それはやっぱり仙台という都市の規模だから起こることなんじゃないかな。仙台の都市としての役割というのは、東京からたった一時間半の東北のゲートウェイってことだと思うんです。東北の面白い断片をちょっとだけ味わえて、ワクワクして、そして東北の各地に散らせて行く、というような。その意味では、東北のローカリズムをいかにプレゼンするかということがめちゃくちゃ重要なんですね。

本郷:最後に、このライブラリーパークという社会実験を終え、仙台市は次のフェーズとしてどういったことにチャレンジしていくのか、お聞きしたいですね。

ちなみにぼくは、公園で淹れたてのコーヒーが飲めるまちに住みたいからという理由で、仲間と一緒に会社を作ってここの運営をやってきました。本当に大変だったけど、色んな人が賛同してくれて、手伝ってくれて、なんとか運営してこれました。毎日コーヒー飲めたり、サンドウィッチ食べたり、東北の食材を使った美味しいものが食べられる公園のカフェになったけど、1年間限りのものだったわけです。こういう光景が毎日あるなまちに住みたい。それがぼくの希望であり、妄想です。

馬場:東北に通うたびに、東北の奥深さとか言語化できない魅力を感じてきました。東北で作られるメディア、同人誌とか本とか色んなものが、日本のどこよりもディープでエッジがきいてるとも感じました。だからそれを伝えたいんだけど、伝えにくいんです。そこで、じゃあ勾当台公園に行ってごらんよって言えるといい。そういうゲートウェイになっていってほしいし、それを表現する劇場を作るのが役割なのかなと今日の話から感じました。

福田:さっき早坂さんが、まちの観光案内所的な役割を担っていきたいとおっしゃってたんですけど、私が本郷さんとポートランドに一緒に行って印象深かったことは、一市民が観光案内みたいなことをやっていたことでした。ケバブ屋さんでご飯食べていると「お前ら明日どこ行くんだ」ってふつうに声かけられて「川沿いにあるマーケットがいいから行ってみろ」って言われて実際に行って楽しんだりということがあったわけです。その人にとって大事な場所になるであろうものを、もっと仙台に来た方に会話のなかで普通に紹介できていけたらいいと思いますね。

馬場:一人ひとりが観光を語れるようになればいいんだ。

福田:そうですね。そのポテンシャルは絶対あると思いますし、そうなれば仙台はもっともっとすごくいいまちになるんじゃないかと思うんですよね。

日下:さっきから「実験」って言う言葉がなんども出てきていますが、「何の実験?」と思っている方もいらっしゃると思いますので、最後に少し説明をさせていただきます。

ライブラリーパークにはふたつの実験がありました。ひとつは、東北の自治体や事業者さんにここを使っていただいて、それぞれの取り組みであるとか、観光のPRとか、そういったものを仙台のど真ん中でやっていただこう、と。果たしてそういったニーズがあるのかというのがひとつの実験でした。で、やっぱりそのニーズはあったわけです。東北の皆さんが仙台をひとつのマーケットとして捉えていて「仙台で発信したい」というニーズを抱えていらっしゃったことがよくわかりました。

ふたつ目は、ここは公園なので、賑わいを生み出すための使い方の実験でもありました。公園で夜に映画だとかタップダンスを見るだとか、ある意味これまでと違った使い方をしてみました。やってみると、すごくたくさんの人に集まっていただきましたし、これまでと違う公園の使われ方に対しても色んなニーズがあるのかなと感じました。公園の在り方と言うのは日本全国で検討されていますので、部署は違うところにはなりますが、仙台市としても今後引き続き検討していくことになると思います。

さて、このライブラリーパークは建築の法律上の制限がありますので壊さざるを得ないのですが、また何かこういった取り組みを今回の成果を踏まえて検討していきたいと考えております。

早坂:ぼくはさっきも言った通り、ミクロの視点では観光案内所的な役割を果たしていきたいと思っています。それを来年最大化させていきたいというビジョンを持っていまして、例えばBOOK CAMPみたいなイベントに関しても、盛岡に人が来てくださるきっかけになるものなんですね。そういうきっかけ作りをしていきたいということと、今回こうして仙台市に呼んでいただけたということもありますので、ぜひ盛岡に人が集まるようなことを仙台市さんのお力をお借りしてもっとやっていきたいなと思っております。

本郷:ありがとうございます、ということでトークライブ、終了したいと思います。みなさん、ありがとうございました。