LIVE + RALLY PARK.(ライブラリーパーク)

TALK LIVE/ビールが繋ぐ、人と人

2018年7月14日、LIVE+RALLY PARK.(ライブラリーパーク)で開催された「North Japan Exhibition 2」では東北のキーパーソンによるTALK LIVE が行われました。

今回は、遠野市から田村淳一さん(遠野醸造 取締役・NextCommonsLab チーフディレクター)と阿部順郎さん(遠野市六次産業室長)をお迎えし、ライブラリーパークを企画・運営する本郷紘一さん(Sendai Development Commission株式会社代表取締役)がモデレーターとなってクラフトビールのまちと文化について語り合いました。

以下、その模様の一部をお届けします。

左より、阿部さん、田村さん、本郷さん

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本郷:こんにちは。North Japan Exhibitionオープニングを飾るトークイベント、テーマは「クラフトビール」です。楽しみですね。岩手県遠野市から田村さんと阿部さんにおいで頂きました。

田村:遠野醸造の田村です。Next Commons Labという団体の理事もやってます。2年前に遠野に移住し、この春に遠野醸造というマイクロブルワリーをつくりまして、遠野をビールで面白いまちにする活動をしています。

阿部:遠野市産業室の阿部です。私は平成26年に農業担当課長になり、以来ホップと向き合って今年で5年目です。よろしくお願いします。

本郷:ホップのまち遠野でお二人はそれぞれにホップに関わっているわけですが、まずは、「Brewing Tono」について教えてください。

田村:遠野市はホップ栽培を55年間栽培してきた歴史があります。しかし近年は、高齢化と後継者不足で農家が減り、町の産業自体が衰退するということで、遠野市では「ホップの里から、ビールの里を目指そう」というスローガンを掲げたまちづくりが始まっていました。とはいえ、ビールの里ってすぐにはできないんですね。55年かけてホップの里になりましたが、これからビールの里になるのはさらに何十年も先でしょう。なら、遠くのゴールに向けて今何ができるのか。その活動自体をブランディングして発信しようと「Brewing Tono 醸造する町」を掲げたんです。まちのいろんなところで、ビールの里に向かって何かしよう。まち中がひとつの醸造所のように、ぐつぐつと、いろんな所で新しいチャレンジが起こるようにしよう、と。

本郷:面白い発想ですね。アメリカのポートランドもすごい数のブルワリーがあったけど、あんな感じですかね。

田村:ポートランドの醸造所はどんどん増えていて今70近くありますね。まちを歩けば醸造所があり、いろんな活動がブルワリーベースで行われている。まさに目指す姿です。

本郷:ビールのまちを目指すにあたり、行政の視点から阿部さんが考えたことはなんでしょう。

阿部:課題のひとつはホップ農家の減少をどう食い止めるか。ホップというのは作付けから出荷して収入になるまで3年を要するとともに、他農産物と比べ初期投資も高額であることから、新規参入は困難と言われていた。そうした中で、後継者確保の取り組みをはじめました。ただ、ホップ栽培には、55年の歴史があり、そこにはキリンビールさんとの契約があるから、つくったホップは確実に買ってもらえる。利益が計算できるというメリットがあるわけですから、きっちりとした生産体制をつくっていけば、ホップ・農業、さらにはビールづくりも含めて農業を軸とした産業総体の底上げを図っていけると思いました。
「Brewing Tono」はそういうわけで、遠野市とキリンビールさん、JR東日本さん、金融機関、さらにNext Commons Labの田村さんにも入っていただき、様々な取り組みを始めているわけです。

本郷:なるほど。

阿部:遠野市のホップ農家さんは昭和49年には220人ほどいて、耕作面積は112haでした。それが、今は34人で耕作面積25ha。つまり1/4です。これを増反し、再度、国内の主要なホップ産地になることを目指しています。おかげさまで、平成29年4月には、4名の方が4haのホップ農場を継承しました。何もしなければ高齢化で4ha減ってしまっていたのを維持継承することができた、ということです。

田村:ぼくらがつくるビールには、遠野産のホップを100%使ったものもありますし、使っていないものもあるんですね。いま遠野でつくっているホップって、ほとんど「IBUKI(いぶき)」という一品種だけなんです。これからはもっと多くの品種のホップを栽培し、いろんなビールをつくっていくという取り組みも考えています。

本郷:「TAP ROOM(タップルーム)」というビアレストランについてお聞ききしたいのですが。コンセプトが「人と人を繋ぐ」ということで、どういったストーリーを描いているのでしょう。

田村:ぼくたちは人口28,000人弱という、凄く小さいマーケットで事業をスタートしました。なので、事業を成立させるためには地域の方はもちろん外から人を呼び込む必要があります。また、仲間ももっと必要です。いろんな方の協力も必要です。そのとき、醸造所がそういう人を集めて繋げていく場所になれば、と考えました。

本郷:つくっているところを見学したり、つくり手さんとお話できたりもできますか。

田村:醸造所の設計で一番こだわったのは、レストラン部分。飲食スペースと醸造スペースを仕切るのはガラス1枚なので、飲みながら醸造タンクが見られます。お店で接客するメンバーは、醸造メンバーなので、どういうビールなのか、どういうこだわりがあるか、話しながら楽しめます。

本郷:素晴らしいですね。面白いフレーバーもつくってますか。

田村:それはまだです。4月に醸造開始したばかりなので、今はベーシックなものだけです。ポートランドのイカ墨のビールとか、日本でもバジルと唐辛子のビールとか大葉を使ったビールとか、いろんな副原料を使えるのもビールの面白さですよね。地域の農産物と掛け合わせることもできるし、ゆくゆくは、「遠野の〇〇さんの家の庭で採れたブルーベリーを使ったビール」なんていうのもできると思います。

本郷:いいですね。今の若者の興味をすごく掻き立てるような気がします。

田村:醸造技術が発達してきているので、ちょっと変わった素材を使っても美味しいビールをつくれるようになると、ますます広がりができるように思います。
また、ブルワリーを軸にいろんなところとコラボしまくるという事例をポートランドで見てきたんですけど、例えば、廃材センターとコラボしてビールつくっていました。木を漬け込むことで、ちょっと木材の香りがするビールになる。それは廃材センターのワークショップで飲むためのビールなんです。そんなふうにコラボすることで互いのお客さんをシェアして、コミュニティがどんどん広がっていく。そういう考え方が凄く勉強になりました。

本郷:ビールというプロダクトをただ売るんじゃなくて、ビールによって人と人がどんどん繋がって、そうして生まれたコミュニティやカルチャーを広げていくわけですね。

田村:そう。彼らはマーケティングも考えるけれど、「そっちの方が楽しいでしょ」ってやっているのがかっこよかった。「コラボするのがあたりまえじゃん」「みんなでやった方が楽しいじゃん」って。

ぼくも2年前くらいからこのビール業界に関わり出して、凄く面白いと思ったのは、みなさんすごくオープンだってこと。ぼくらの醸造家は、2年前に採用したときはビールづくりの経験がなかったんです。それで日本のいろんなブルワリーに相談したら、30軒くらいのブルワリーが受け入れてくれて、設備も全部見せてくれて、レシピも教えるよって言ってくれたんです。それってまさにポートランドの考え方に近くて、みんなで情報をシェアしてみんなで高め合うことで、ブルワリー全体のビールのレベルを上げていくっていう考え方なんですよね。
これから、まち全体でやっていく上では、プレイヤーみんなで情報をシェアして、みんなで高めあっていくみたいなことはとても大事になると思うんです。東北ってホップの産地として適した場所で、面積でいうとホップの畑の最大面積の一位が岩手県遠野市で、栽培量の一位は秋田の横手市です。これから遠野そして東北全体でビール押しでいけるんじゃないかなと思うんですね。

本郷:遠野の次は横手に旅をしてみようとか。

田村:そう。今、遠野市内のブルワリーとかホップ畑めぐりをするビアツーリズムを企画しています。それを岩手県に広げたり、さらに東北に広げたりしていきたい。海外の人が、東北を巡っていろんなブルワリーを回って、いろんなビールを飲んで楽しめるってことが出来たら面白いなあと。

本郷:次は秋田行こう、岩手行こう、仙台行こうってなりますよね。で、各地にいろんなゲストハウスがあって、そこに各地のクラフトビールが並んでいて、「じゃあ、今日はこれ」って選んで飲んだりできたらすごくいい。

田村:本当にできると思います。

本郷:田村さんは、もともとリクルートにいらっしゃったんですね。

田村:そうです、新規事業立ち上げとか、法人のコンサルティングをやってきました。そこを辞めたのは、元々ローカルに興味があって、いろんな課題がある地方で何かやることが自分の自己実現に繋がると思ったから。それが遠野だったのは本当にはたまたまです。たまたま来た遠野にビールとホップがあったって感じですね。

本郷:じゃあ、ビールが最初から好きだったわけじゃない?

田村:以前はあんまりビール飲まなかったですね。遠野に来て、ホップを知って、ビールを知っていくうちに、美味しさとか楽しさとか乾杯で繋がる感じにだんだん惹かれていって。今じゃ、ビールばっかり飲んでますけど。

本郷:まちを醸造所としていくと言っても、簡単じゃないですよね。ビジョンのところ、聞きたいです。

田村:ビールの里に向かうために皆がチャレンジし、個々がぐつぐつと動き始めるイメージですね。例えば、直近でいうと、東北電力さん。彼らは夏になると朝顔やゴーヤの種を配り、グリーンカーテンをしてエコな暮らしをしましょうっていう活動をしているんです。それを、遠野はビールの里なんだからホップ植えたらいいんじゃないって持ちかけまして、去年から始まりました。それで、町中のプランターにホップをどんどん植えていきました。

本郷:いいですね。

田村:ホップは多年草で、植えた株は2年目、3年目と大きくなっていくんです。なので、年を追うごとに増えていく。やがては遠野の駅を降りた瞬間に、まちがホップのグリーンカーテンでいっぱいの風景が広がるわけです。
こんなふうに、地域の事業者や地域の人ができることを形にしていくのが「Brewing Tono」構想のひとつだと思います。また、中長期的な話でいえば、2年以内にもうひとつブルワリーをつくりたい。ブルワリーができ、ゲストハウスができ、ホップにまつわるグッズやプロダクトができ、ホップの多品種の栽培が始まる、といったことが2年くらいで形になってくると、「あ、ビールの里になってきているんじゃないのかな」ということにみんな気づき始めると思うんですね。ぼくのなかではさらにもう3つ目のブルワリーの場所までなんとなく決めていて、市役所にもご協力いただきながらどんどんやっていきたいですね。

本郷:ホップが豊かに広がっていけば、醸造家もどんどん出てくるでしょうね。

田村:醸造家を志している方が醸造やホップについて日本で学べる場所ってあんまりないんですよ。それをこの遠野につくりたい。

本郷:絶対いい!

田村:今年秋ぐらいから、ビアアカデミーを開講したいと思っています。ホップってどういうものなのか、ビールづくりとはどういうものなのかを学んでもらい、最後は実際にビールをつくるつもりです。ゆくゆくは日本において、醸造やホップを学べる場所が遠野でありたい。「遠野にいけば学べるし、飲めるし、楽しいし、最高」みたいにしたい。阿部さんには今初めて言いましたけど。

阿部:まあ、田村くんが言いたいのは、遠野をホップの聖地にしたい、ビールの聖地にしたい、第2のポートランドを日本に作りたいということです。行政としては、田村君たちの取り組みを早めるお手伝いができれば、と思っています。

田村:ひとつ付け加えておきたいのは、遠野だけ良くなればいいってなんてぼくらは全然思ってないってことです。日本のビール文化がもっと面白くなればいいし、遠野はその先行事例として進んでいきたい。そしたら次は横に広げていきたい。遠野から東北へ、日本へ、ビールが楽しいまちが増えていったらいいと思います。

本郷:さて、そろそろ時間になってきました。最後に、おふたりからそれぞれビールの里への想いをお願いします。

阿部:クラフトビールってアメリカではシェア20%ですけど、日本はまだ1%です。ビール文化の素晴らしさは実は多様性にあると思います。いろんなクラフトビールを楽しむコアユーザーを、東北さらには首都圏に増やしていきたいですね。そして結果的に、遠野がビールの聖地になることを目指していきたいです。豊かなビールの多様性のなかで、そのビールの文化というものをどう醸造していくかっていうのが、田村くんたちのミッションでしょうし、我々はそこを支援することに頑張っていきたいと思います。

田村:今日もこんなふうにビジョンを語り、夢を語ってきましたけど、ぼくらは今、仲間がすごく欲しいんですね。いろんな人にぼくらの存在や活動に気付いてもらって、ビールの里構想やビールの文化をつくっていくというぼくらの事業に是非参加してもらいたいと思っています。

ちょっと告知になりますけど、8月25、26日に、ホップ収穫祭をやります。2日間ビールを飲んで、ライブを聴いてっていうイベントです。会場からホップ畑へのバスツアーもあります。いろいろ楽しんで頂けるイベントですので、是非皆さん、ご参加頂ければ嬉しいです。また同じ日程で、一関で地ビールフェスもやってます。一関と遠野で同じ日にビールイベントやるわけなので、25日の16時に遠野・一関直通の電車を走らせます。ですから朝、遠野に行って夕方までビール飲んだら直通電車で一関に行って、またビール飲むことができます。電車の中でも、遠野の2つのブルワリーの限定ビールを出す予定です。是非、ご参加ください!