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美郷町/甘くて、酸っぱい、米料理「あさづけ」

「あさづけ、食うか?」
「あ、はい」
こう言葉を交わしたあと、すっと出されたのが、重湯と粥の中間のようなどろっとした白い物体だとしたら、あなたはどうしますか? 器は小皿ではなく、お碗。添えられたのは爪楊枝ではなく、デザートスプーンです。「なるほど、このお粥に浅漬けが添えられるのね!」。けれども、待てど暮らせど、漬物の「浅漬け」が登場することはありません。なぜなら、この白い食べ物こそが「あさづけ」だからです。ひとさじ口に運べば、爽やかな酸味と、しっかりとした甘みが口いっぱいに広がります。その向こうによく知っている味が……。そう、お米! なんとお米が甘く、酸っぱく炊かれているのであります。

江戸時代から食べられていたという「あさづけ」の語源は不明ですが、
1. こざきねり
2. こさぎがゆ
3. 粉なます
4. 酢がゆ
などともいいます(農文協『秋田の食事 日本の食生活全集5』より)。「こさぎ」とは砕け米のことで、米を(もみ)から玄米にするすり臼の中に多く出たものだそう。同書には10人家族で一升のこさぎ米が出たとあります。その「こさぎ」を無駄にしないために考えられた食べ方が「あさづけ」だったとあります。

祝儀、不祝儀の取り回し料理やさなぶり(田植えが無事に済んだお祝いの行事)の料理として、女性たちの集まりの持ちよりにも最適とされ、50代以上の秋田県民にとっては「あさづけ」は母親がおやつに作ってくれた「おふくろの味」的立ち位置なのだそうです。

どうやってつくるの?

この「あさづけ」の作り方を工藤ヒデ子さん(78歳)に習いに行きました。

真ん中でお砂糖を入れているのが工藤ヒデ子さん。公民館の台所を借りて、みんなで工藤さん直伝のあさづけづくりを学びます。工藤さん直伝のレシピはこちら。

【作り方】
①米は洗い、3時間以上水に浸します。

②具の下ごしらえ。きゅうりは塩でもみ、輪切りに。かぶはゆでて薄切りにします。果物類は洗って適当な大きさに切りましょう。

③すり鉢に水を切った米を入れてすりつぶします。目安は米粒が少し残るくらいまで。

④③を鍋に入れ、水6カップを加えて中火にかけ、焦げつかないようにヘラで混ぜます。

⑤ドロッと重くなり、透明になってきたら火を止め、酢を少しずつ加えて粗熱をとります。

⑥冷めたらきゅうり、かぶ、果物類を入れて、完成!

かぶ、きゅうり、キウイ、リンゴ、柿を全部のせ!もっとかんたんに作るには米粉を水で溶いて使うやりかたもあるそうですが、工藤さんによると、「米本来の甘みが出るから、米からつくるほうが手間がかかるが、味は格段においしい」とのことでした。

「さあできたよ! 召し上がれ!」とレシピを教えてくれた工藤さん。

トッピングいろいろ!

好みの果物やきゅうり、かぶをトッピングして完成!あさづけはそのままスプーンで食べるほか、さまざまなトッピングで楽しみます。まるでヨーグルトのようですね。スーパーなどではみかん、きゅうりがトッピングされていることが多いですが、『聞き書 秋田の食事 日本の食生活全集⑤』によると

1. みかん(もっぱら缶詰のもの)→ 祝いごとや法事のあさづけ
2. きゅうり(薄い小口切り)→ 祝いごとや法事のあさづけ
3. かぶ → 春の田植えどきや普段のおやつのあさづけ

というように、あさづけのトッピングにもTPOがあったものらしいです。工藤さんのあさづけは他にもりんごや柿など、季節のものを取り入れていました。

あさづけと持ち寄りのおかずを囲んで。秋田の長く続く寒さが緩み、日中は軽く汗ばむような陽気の日が続く頃、秋田にも田植えの時期やってきます。そんなとき、この甘くて酸っぱくてひんやり冷たい「あさづけ」を食べると田んぼ仕事の疲れもスーッと抜けるような気がするから、不思議です。

 

写真:高橋 希
文・編集:三谷 葵
this article from yukariRo

LOCAL MEDIA
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yukariRoは、漢字にすると「縁路」。ご縁でつながった人たちに取材し、当たり前すぎて「ふつう」のワケを調べ、その土地ならではのおもしろさを追うリトルプレスです。その土地らしい理由、人の性格、クセや習慣、自然、歴史、ほんの偶然……。何が出てくるかはわからないけど、出てくる何かがおもしろい。そういうおもしろさを求めて、自分たちの住んでいる町を取材しています。

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WRITER / EDITOR
三谷 葵

1981年長野県生まれ。編集者・ライター。中央大学大学院総合政策研究科修了。新潮社「考える人」アノニマ・スタジオを経て、2013年3月より秋田県在住。株式会社See Visionsで編集者・ライターとして活動するかたわら、リトルプレス「yukariRo」をカメラマンの高橋希と二人で立ち上げる。一度ハマるとしつこいタイプ。

PHOTOGRAPHER
高橋 希

1974年秋田県生まれ。明治大学文学部在学中、音楽冊子『SPYS』の制作にかかわることで写真に興味を持つ。卒業後、写真家・河村悦生氏に師事し独立。フリーランスのカメラマンとして活動していたが、2013年4月に秋田へ戻る。リトルプレス「yukariRo」のほか、アートイベント「オジフェス」を4回実施。“ないものは作る”がモットーの猪突猛進型。
https://ozimoncamera.tumblr.com/

SPOT.
六郷湧水群

奥羽山脈と出羽山地に囲まれた美郷町は全国名水百選に選定された湧水スポットがたくさんあり、散歩しながら回ることもできます。澄んだ水は口に含むとまろやかな味わい。今でも「御台所清水」と呼ばれるこの湧水には、水を汲みに来る近隣住民の姿が見られるなど、生活に密着した湧水となっています。

PRODUCT.
ゆざわざわざわ ゆざわざわ 奮闘号

勝手に宣伝組合/1000円

秋田県広報誌「のんびり」の製作に携わったデザイナー・澁谷和之さんと、同じく「のんびり」カメラマンでマタギでもある写真家の船橋陽馬さんの二人が秋田で出会った人や地域・モノなどの魅力を、勝手に宣伝・発信しちゃうのが「勝手に宣伝組合」。ちょっとざわざわする湯沢市の魅力を詰め込んだ冊子です。奮闘号秋田の郷土料理「あさづけ」が別名の「こざきねり」として紹介されています。