LIVE + RALLY PARK.(ライブラリーパーク)

西会津町/会津張り子職人の「伝統」

会津張り子職人/豊琳、早川美奈子
福島県・西会津町

福島県西会津町に野沢民芸の工房があります。ここでは、江戸時代から約400年にも渡って伝わる郷土玩具「会津張り子」が作られています。「赤べこ」に代表される会津張り子の多くは、赤色を基調とした彩色が施されており、開運や魔除けのアイテムとなったり、五穀豊穣や商売繁盛をもたらす縁起の良いものとして人々の暮らしのなかで親しまれてきました。

この工房で、張り子の原型となる木型の制作をおこなう豊琳さんと、新たな絵付けに挑み続ける絵付け師の早川美奈子さんは、二代にわたって会津張り子をつくりつづける親子です。長きに渡って郷土玩具づくりの道を歩みつづけるおふたりに「伝統」についてお聞きしました。

豊琳:郷土玩具というのは、自由なかたちを打ちつけて木型を作ってしまえば、そこに紙を貼ると誰にでも作品ができるという、とても庶民的なものだったんです。

そういう張り子の原型となる木型を私はずっとつくってきたわけですが、これは全くの独学です。以前はろくろを引いてこけしを作っていた時期もあったのですが、より自由な発想で木を彫刻していく張り子づくりの方が面白かったんですね。

豊琳:大切なのは、かたちをつくる前のイメージです。一旦制作がはじまれば手が動くのは早いけれど、頭のなかで考える時間は2ヶ月くらいにもなります。イメージから型を起こし、造形し、絵付けをするわけですが、機械ではなく人の手がつくるものですから人が変われば筆さばきも持ち味も変わります。ですからイメージしたものからぐっと遠のいてしまうことも時折あります。すぐ目の前にあるような気がするのにすごく遠い。そこが楽しくもあり難しく、苦しむ部分です。

豊琳:会津の赤べこづくりは、かつて家内工業でやっていた方が30人ほどもおりました。
その30人の方の作った赤べこというのはどれも模様やかたちが全部違うんですね。

豊琳:私も、私のイメージしたものを一貫して50年作りつづけてきました。
数百年前からのイメージを引き継いで同じものを作っていく。それが私たちの伝統です。

早川:幼い頃から毎日この工房の風景を見て、父がべこの絵を描いてくれるのを見たり話したりして育ってきた私は、この仕事をはじめて30年になります。

絵付けというのは、線の太さや細さを調整するだけで一本の線の見え方が全く違ってきます。一本の線の中に太さのばらつきがないように、一気に描くような筆の動きが大切です。描く時のスピードと、筆にのった絵の具の具合が、仕上がりに関係してきます。丁寧に描き込んだからといってよくなるわけではないし、ちょっと曲がっていたりしても、筆に勢いのある線は格好いいんです。

早川:これまでの張り子のイメージにはない新しい柄の絵付けもどんどんやっています。
伝統は伝統で、続いていかないと意味がないものだと思うんです。

伝統というのは、かたちを変えて伝わっていって、伝わっていった先にあるもの。受け継いでいかなかなきゃいけない部分ももちろんあるんですけど、新しいものを取り入れていろんな人に見てもらって、支持されて受け入れられることで生き残っていく、ということもとても大事なことですから。

早川:少しずつその時代の生活に合ったものをつくっていく、だけど本当のものはちゃんと残っている、というのが理想ですよね。いろんな人に愛されるものをつくれれば元々のものも残るし、つくっている人の気持ちがブレなければ、伝統なんじゃないかと思います。

ずっとつくり続けていくということにこそ、意味があるのではないでしょうか。

写真=東北STANDARD this article from 東北STANDARD