LIVE + RALLY PARK.(ライブラリーパーク)

TALK LIVE/八戸ブックセンターが創り出した新たな生活

2018324日、LIVE+RALLY PARK.(ライブラリーパーク)で開催された「North Japan Exhibition/東北 暮らしの展示会」では東北のキーパーソンによるTALK LIVE(全7回)が行われました。

公園に気持ちのいい西日が射しこむなかで始まった第6弾は、八戸市から小林眞さん(八戸市長)と金入健雄さん(株式会社金入代表取締役)をお迎えし、ライブラリーパークのディレクターである本郷紘一さん(Sendai Development Commission株式会社代表取締役)、そして馬場正尊さん(東北芸術工科大学教授)が、本屋のあるまちの文化について語り合いました。

以下、その模様の一部をお届けします。

========

左より本郷氏、金入氏、小林市長、馬場氏

馬場:さて今日は「八戸ブックセンターが創り出した新たな生活」というテーマで、八戸にヤバい施設がありヤバい市長がいるとのことで、是非にとお願いして市長にお越しいただきました。一体何がヤバいのか、解き明かしていきたいと思います。まずは八戸ブックセンターとは何なのか、ご説明いただけますか。

金入:ライブラリーパークの工芸品のディレクションをしております金入です。八戸ブックセンターは、八戸市でつくった、地元の本屋さんの連合で運営している、市設の本屋です。市で商売をやっているように見えるという、おそらく他に存在しないタイプのものです。

馬場:市が地元の本屋さんを束ねて本屋をつくった?

小林市長:人口23万人の八戸市では書店経営が厳しく、上質で専門的な本がウケない状況です。ネットで注文すれば送料無料で翌日に届く時代だからこそ、素晴らしい本と偶然出会う環境は大切であり、まちの本屋さんにはそういう拠点であってほしいと考えてきました。売れる本は本屋さんで売る。そして哲学書やアート本など売れそうもないけど世界が詰まっている、人生が詰まっている、そういう本を市が行政サービスで売る。儲からないから各方面から怒られているけど、めげずに頑張る!

馬場:なんでやろうと思ったんですか?

小林市長:私は現在4期目で、公約に「本のまち」を掲げています。本でまちを盛りあげる。すぐ効果が出るものではないけど、長く暮らす人や子供たちの人生を豊かにするいい政策だと思っています。「ブックスタート」や「ブッククーポン」などの事業を地道にやってきて、終着点が「ブックセンター」です。立ち読みも座り読みもOKという空間で、ギャラリーもあり、内沼晋太郎さんというブックコーディネーターの方にアイデアを考えていただいて、それを直営でやる形です。

馬場:市の事業として?

小林市長:仕入や販売などの書店業務は、金入も含めた市内3書店でつくった有限責任事業組合に委託しています。あとは、3人の専門スタッフを市の職員として採用しました。都内の某書店に勤めていた人が2人、手を挙げて移住してくれました。

金入:本屋はまちの「知のインフラ」ですが、民間の本屋が自分の力だけでその土地の文化や知のインフラとなるのは厳しい時代です。市がやっている本屋っていうのは仮の姿で、ある意味では、図書館や大学に代わるような新しい公共の役割を、たぶん全国で初めて八戸市が先陣を切ってつくったという、すごく意義深い存在だと思っています。

馬場:すごいことやってますね。

金入:このブックセンターは突然できたわけじゃなく、「八戸ポータルミュージアムはっち」という施設があり、それを建てるときから市長は「八戸は文化のまちなんだ」とおっしゃってました。「はっち」があり、まちなかでいろんな流れがあって、ブックセンターに辿り着いたんです。

小林市長:僕は大学進学とともに八戸を出たのですが、それまでの八戸のイメージは、稼いでなんぼの働く街、産業が強い街、でした。でも帰ってみると、文化があって、みんないろいろやっている。そういう人たちと力を合わせながら新しい形をつくっていこうと、いろいろと試行錯誤を積み重ねてきました。

馬場:八戸は実は潜在的に文化活動が盛んで、「はっち」をつくったことでそれが一気に顕在化した、ということなんですね。

金入:「はっち」は仙台でいうメディアテークみたいな建物です。市民に開かれたギャラリーがあり、行くたびに違う方々が活動している場所。文化活動をされている人たちのステージであり、そこからいろんな動きが生まれている。

小林市長:美術館でもないし博物館でもないから、一体何をつくるのかわからないと言われて各方面から相当やられて

金入:私はそこが重要だと思っていて。何かわかる建物って、悪い意味での箱物だと思うんです。でも大切なのはそこのなかを動かしていくこと、市民がそこで活躍していくことじゃないかって思います。

馬場:みんなで考え、みんなで施設空間をつくっていくんだね。そうするプロセスの中でレベルがあがっていく。それでブックセンターに脈々とつながっていくわけなんだなぁ。

馬場:ここで本郷くんに聞きたいんですけど、ここを今回ライブラリーパークと名づけて本を重要なコミュニケーションのきっかけにするアイデアを思いついたわけだけど、なんで本だったんだろう?

本郷:ライブラリーパークのなかって、普通に書店では売ってない本が並んでるんです。東北6県のローカルな冊子とかリトルプレスと呼ばれる小さな出版物ですね。

馬場:リトルプレスね。

本郷:大手の書店では出会えない、発掘しないと出会えない本ですよね。けど、それこそが暮らしや人につながっていくんです。地域の魅力が詰まっているものを埋もれている中から発掘して発信したいってことですね。

小林市長:高校時代、学校帰りに本屋さんに行くと美術全集や百科事典や面白い本が書棚にいっぱいあったわけです。そこに世界が広がっていたんです。立ち読みし、世界に出会い、得がたい経験をした気持ちになる。まちにそういう知の拠点のような環境が、図書館とは違った書店というかたちで必要だと思うんです。

馬場:実は僕の実家、本屋なんです。思い出してみると、本を買いに、本の話をしに、会話をしに、いろんな人が来て結節点みたいになってた。本屋って昔はそういう場所だったんですね。今は商売が成り立たないから売れ筋の本を並べるしかなくて、そうするとその深みとか文化みたいなものがバッと欠落してしまって、それでまちの文化度がどんどん下がって負のスパイラルになっていく。そこで踏みとどまる施設を、行政が覚悟してつくるってすげえな!って改めて思いました。

金入:本屋がなくなるだけでなく、その結節点が失われるという危機感ですよね。

馬場:金入さんもよく踏みとどまって、メディアテークや東北芸工大の中でも本屋として入ってますね。商品のラインナップがめちゃいいですよね。

金入:文化のまちを謳う八戸で、商売の危機感を持ちながら、小林市長がつくってくれた器のなかで一緒に並走しつつ育ててもらってきたんです。八戸が文化のまちを推進するなかで、自分も外に出させてもらって、いろんなつながりを得ながら今ここに辿り着いてる感じです。

デザインやアートを店に並べることが、田舎ではめちゃくちゃ難しいんですね。それで考えたのがお土産との組み合わせでした。工芸品をブラッシュアップし、デザイン良くみせることで、デザインマインドも上がるし、観光地のお土産がカッコよくなっていく。さらには、自分の街にこういうかっこいい場所があるんだと、地元の人のプライドにもつながっていく。というとこまで考えていました。

小林市長:ちょっとこれからの話をさせてください。「はっち」があり、ブックセンターがあり、今その中間の場所に施設をつくってます。この広場みたいな場所にガラスの屋根をかけるというか。

馬場:屋根のある公園みたいな?

小林市長:雨風雪をしのげる公園ですね。夏までにつくります。

馬場:

小林市長:731日から84日まで三社大祭なんですが、その前の721日にグランドオープンです。

馬場:施設の名前は?

小林市長:「マチニワ」です。

馬場:お話聞いてわくわくしています。既存の常識をぽんぽん外していってますね。公園だけどガラス張りで屋根があるとか、行政は本屋さんみたいなことをやっちゃいけないという常識をぶっ壊して本屋さんをやるとか。考えてみれば、今までの概念にとらわれる必要はなくて、それをやることによって、全く新しいことが起こりそうな気がする。それを平然とやり続けてるというのはすごいし、それを市長が言い始めてるっていうのは結構クレイジーですね。

金入:今回おもしろい公務員を紹介してって言われて、ここは小林市長だなと思いまして。

小林市長:たまたま新幹線の駅で会って「行きませんか?」って言われて。軽いノリでここに来てます。

金入:たぶん日本で一番会える市長ですね。

小林市長:排除しない土地柄というか。。。。ちょっと来るつもりがずっといますって人がいたり、最近は移住したいって相談が急激に増えてるんですよ。

馬場:八戸に?なぜ?

小林市長:なぜでしょう。2年前100人だったのが、去年は400人近く。今年は2月までで600人近くから相談がありました。みんなそろそろ東京が嫌になってきてるのかな。

馬場:そうかもしれないですね。

小林市長:それに期待しています。働くところはいっぱいあるし、人手が足りないので。重工業の大きな工場や精密機械の工業団地もできて、IT系の会社もけっこうあるんです。Yahooの東日本拠点も八戸にありまして、Yahooトップページは八戸でつくってますよ。

馬場:いろんなものがあるんですね。よそ者を拒まない感覚がベースとしてあって、あとは「はっち」をはじめとする文化的仕掛けがボディブローのように効いてるんじゃないですか。

本郷:あの、ライブラリーパークに八戸のものを展示したいと思ってたんですけど。デコトラなんです。八戸に、デコトラを生み出したレジェンドがいるんですよ。

馬場:ゴテゴテに装飾した、ビガビガってしたトラックね。

本郷:そう、あのデコトラが生まれたまちの話を聞きたくて。フェスもやってらっしゃいますよね?

小林市長:夏坂さんっていうトラック野郎が、八戸の魚を築地に持ち込むときにできるだけ早く荷を降ろしたいので、とにかく目立って「どけどけ!」っていう考え方でトラックを飾ったんです。それを見たトラック仲間たちが真似てやり始めた。夏坂さん自身は「トラック野郎」の映画にもでています。

金入:菅原文太のモデルになった方ですね。

小林市長:去年、八戸でやった「デコトラ祭」には300台ほど集まりました。

馬場:市のイベントですか?

小林市長:市が協賛し、市長賞も出してます。

金入:夏坂さんは18歳からトラックに乗り始めて「八戸から運んでるぜ、俺たちかっこいいだろ」というのを見せるのにそういう飾りをして、いろんな港の人たちと競い合って、文化を築いてきた。

小林市長:八戸には三社大祭というのがあって、どれも山車を飾るんですが、専門の山車職人がいるわけじゃなく、町内でつくるんです。飾る技術とか文化というものがデコトラの発想にも反映されてますね。

金入:盛る文化っていうか。デザイナーの北川一成さんに言われたのは「八戸のいいところっておっちゃんが勝手にやっているようなものがいっぱいある」ということ。「まちを歩いてると、店の看板とかめちゃくちゃで原色ばっかりだし」って。ちょっと狂った人たちが、東北の田舎の独自性をもって、すごいクオリティで、手法にこだわって発展させちゃったっていうか。

馬場:勝手に解釈して勝手にいろいろやってしまう独特の文化がある。

小林市長:居着いたアーティストもいてですね、山本耕一郎さんっていう方。

金入:組長ですね。

小林市長:高校生も若い人も含めて市街の活動をやれる時でいいから一緒に集まってやる「まちぐみ」というのがあるんですが、そのイベントで何回か来ているうちに自分で空き家を改造して住み着いてしまった。で、最初にやったのが「八戸のうわさ」という、漫画の吹き出しを商店街に貼っていくっていうやつです。

馬場:知ってる!あれ八戸なんだ。

小林市長:そうです。「ここの店長さんは、昔、甲子園に出たことがあるらしいよ」とか、そういった類の。

馬場:勝手に書いてるんですよね?

小林市長:取材しながら。怪しげな風体なので最初は大変だったらしいんですけど、何回か通ってるうちに、全商店に貼られたと。

馬場:勝手に吹き出しを貼っていく、と。

小林市長:勝手にじゃないです。ちゃんと、こんな感じになりますと協議をした上で。

馬場:八戸に行きたくなるなあ!

小林市長:明日、カクテルコンペティションやってますのでぜひ。

馬場:カクテルコンペティション?

小林市長:カクテルのまちでもあるんです、八戸は。バーテンダーもいっぱいいます。やっぱり市長賞、出しますよ。

金入:スナックとかバーが異常に多いんですよ。

小林市長:夜の街が充実してるんです。八戸はかつて水揚高日本一になったこともあり、漁師が飲屋街をつくったようなところがあるんですね。

金入:昔は懐に札束入れた漁師さんがきて「おらーーっ」て言ってたって聞いてます。

馬場:それだけ豊かだったから独自の文化が発展してるんだよね。かなり偏ったかたちで。

金入:市長、ワインの話は?

小林市長:合併した南郷村っていうところが葉タバコの生産地なのですが、タバコの生産の受入れが減ってきていることもあり、畑が荒れてきている。ということで、そのあとに何をつくるか検討して、ワインをやるってことで3年前くらいから始めて去年の10月に初めて収穫し、今年の1月に最初の八戸ワインができました。今後、生産を拡大していきます。

馬場:タバコからワインに産業の転換を図ってる、と。

金入:ブックセンターで飲めるようになると思います。

馬場:え?

小林市長:それも批判されてるんですよ。なんで行政の本屋でビールとかワインが飲めるんだ、おかしいだろって。議会で相当やられてます。

馬場:そうですよね。でもすごいですね。がんがんいきますね。

小林市長:ゆっくりと時間をかけて飲める飲み物があってもいいじゃないですか。

馬場:行政がやる本屋で、ビールもワインも全部でてくる。すべてがなんかおかしい。

僕、八戸について一生懸命調べて、産業のこととや漁業のことはたくさん出て来たけど、今ここで話してもらったような盛っていくカルチャーとか、デコラティブな祭りとか、トラック野郎とかデコトラの起源だったとかまるで知らなかったし、全然辿り着けなかった。でもそれが一番本当に知りたいし見てみたい。

小林市長:その点は反省しなければならないと思います。この楽しさをよその人にも味わってもらわないと。

馬場:それこそインスタとか、情報伝達の手段が変わってきて、異常に見たくなる感じとか、行ってみたい感じになるもん。今まではそういう風景を伝達する手段とか方法とかなくて、観光にもならないからスルーされてきたけど、実はそういうことこそ異様にそそるコンテンツなんだよね。

小林市長:ブックセンターにおいでいただいている来店者の半分が市外の人。要するに、飢えてる人がいるってことだと思うんです。本は8000冊あるんですが、先日、仙台の某大学の教授がきて「仙台のどの本屋よりも品揃えがいい」と言っていただきました。

金入:市長、攻めますね。

馬場:なのに議会でいじめられているっていうのが、ほんとかわいいというかおもしろいですね。

本郷:コンシェルジュみたいな人がいるんですか?

小林市長:選書と、棚のレイアウト、文脈棚っていう並べ方をしています。例えば、死とか、愛とか、テーマ別に置いて。

金入:ハンモックの横に愛の棚があるんです。

馬場:カップルで読んでくれと。そういうのって誰が思いつくの?

金入:それは内沼晋太郎さんですね、下北沢のB&Bの。それこそメディアテークで出会って。

馬場:そこでハンティングしてきたんだ。

金入:次の本屋のスタイルを模索されてたので。

小林市長:面白い人がいれば呼んできていろいろやってもらう。だからブックセンターも内沼さんのアイデアでやってるんです。

馬場:新しいカテゴリーの空間には新しいタイプの職能が必要になってくるから、結果、面白い人たちが集まってくるんだな。少しブッとんでいかないと、おもしろくなくなるんだな。いままでの既存の定義の枠組みの中にいると、既存の定義の枠の中におさまった人が来て、今まで通りの運営をしちゃう。

小林市長:最後に、自己紹介していいですか?

馬場:え!どうぞ!お願いします。

小林市長:八戸の浜で生まれ、実は、青春時代を仙台で送りました。まだ、新幹線の仙台駅が建築中の頃です。学生時代ですね。今、新しい建物もいっぱいできましたけど、そのころから市役所と第一生命ビルはありましたね。女房が仙台で演劇やってまして、僕はそれを手伝ってるうちに、なんか知らないけど一緒になりました。その前にマリちゃんに振られてですね、マリちゃんはまだ仙台に住んでます。憎たらしい出来事! 以上、自己紹介でした。

馬場:あー、ありがとうございます(笑)。市長の自己紹介が終わったところで、終わりでいいよね。
八戸、めっちゃおもしろそうですね。やっぱりヤバい。こんな人初めて見ました。
とても楽しいトーク、ありがとうございます。こんな話が最後に聞けるとは思いもしなかった。
ぜひみなさん盛り盛りの表現を見に、八戸に遊びに行きましょう。

SPOT.
八戸ブックセンター/青森県八戸市

八戸ブックセンターでは、提案型・編集型の陳列による本の閲覧スペースの提供と販売、本に関するイベントの開催などを中心に、市内の民間書店や図書館、市民活動と連携しながら、全国で類を見ない、これからの時代にふさわしい本に関する公共サービスを構想し、提供していきます。
また、小さいながらも、豊かな本の出会いを提供するあたらしい施設として、市民のみなさんはもちろん、全国から注目され、多くの人が当市に訪れてみたくなるきっかけとなるような場所へと育てていくことも目指します。

八戸市大字六日町16番地2 Garden Terrace 1階
https://8book.jp/