LIVE + RALLY PARK.(ライブラリーパーク)

TALK LIVE/マルカンビル大食堂はなぜ復活したのか?

2018年3月17日、LIVE + RALLY PARK. (ライブラリーパーク)で開催された「North Japan Exhibition 東北 暮らしの展示会」では東北のキーパーソンによるTALK LIVE(全7回)が行われました。花巻から小友康広さん(花巻家守舎 代表取締役)、伊藤直樹さん(花巻市建設部都市政策課長補佐)のおふたりをお迎えし、LIVE + RALLY PARK. の仕掛け人のひとりである本郷紘一さん(Sendai Development Commission株式会社代表取締役)が聞き手となったトークライブ第3弾のテーマは「マルカンビル大食堂はなぜ復活したのか?」。地元市民に愛されてきたマルカン大食堂が閉店を発表してから復活するまでの物語とその舞台裏についてたっぷりとお話いただきました。

以下、その模様の一部をお伝えします。
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左より本郷氏、小友氏、伊藤氏。

小友:小友です、はじめまして。生まれは岩手県花巻市です。東京でIT会社を経営しつつ、創業114年目の木材屋の四代目でもあり、全部で6つの会社を経営しています。ひょんなことからマルカン百貨店の大食堂の再生をすることになりまして。今日は皆さんとたくさん話できたらと思います。よろしくお願いします。

伊藤:仙台のみなさん、こんにちは。花巻市役所の伊藤直樹です。リノベーションまちづくりで色んな事業を作っていく花巻家守舎という小友さんの会社があるんですが、その株主もやっております。よろしくお願いします。

本郷:さてこれからマルカンビルの話をしていきたいんですけど。ここにいる人でマルカンビル大食堂のことがわかる方いらっしゃいます?

小友:おお、いる!ありがとうございます。

本郷:まあまあいますね。僕は復活前は知らなくて、復活後初めて知って行ってみたんです。1Fと6Fだけ復活していて、2~5Fはあえて空いたままというやり方がとても面白いと思いました。
で、6Fにあるそのマルカンビル大食堂へ行ってみると、すごいにぎわいで驚くわけですよね。まちにも全然人がいない感じなのに、食堂に上がったらめっちゃ人がいる!

そもそもマルカン百貨店閉店のきっかけはなんだったんでしょう?

小友:株式会社マルカンという会社は百貨店を出発点として多角展開していったのですが、時代の流れで百貨店の経営もなかなか難しくなってきていたようです。また、電源設備や厨房設備などを43年間使い続けてきて、設備もかなり限界に来ていました。更にそこに3F建て以上5千平方メートル以上の建物はもれなく耐震検査をしなさいって法律が出てきて、検査受けたら不適格で、耐震しなさいってことが追い打ちをかけた。これら全部投資してまた事業を続けていくのはムリ、閉めます、となったわけです。

本郷:市民に衝撃が走った?

小友:報道発表があったのが2016年3月7日。衝撃も衝撃。地元の女子高生が署名活動を始めちゃうほどの衝撃です。

本郷:小友さんも?

小友:僕は「もったいない」って思いました。「めっちゃもったいない」って。30年ぐらいマルカン百貨店を定点観測して来て、ビルの1Fから5Fのお客さんがどんどん減っている感じはわかってました。でも、大食堂だけはいっつもお客さんがめっちゃいるから、こんだけ人を集めていて愛されている場所がなくなるのはイヤだったし、自分が花巻のまちを変えていく取り組みをしているなかで、まち一番のコンテンツが消失するのはもったいなすぎると思いました。

本郷:百貨店じゃなくて、大食堂がなくなることが?

小友:そう。

本郷:行政はどうだったんですか?

伊藤:マルカンの社長さんから、その一年半前に「閉店しなければならなくなりそうだ」と市長に相談が入りました。市としては、なくなられちゃ困るので、耐震補強の補助金がありますとか、3、4Fのフロアを市役所が借りますから継続しませんか?っていう提案はしたんです。でも、社長さんは「経営自体ムリ、食堂の継続もムリです」とおっしゃって市役所の交渉は失敗しました。小友さんの登場はその後のことでしたが、そういう経緯を知っていたので小友さんが交渉してもオーナーさんが「うん」と言わないだろうなって思っていました。でも、小友さんが行ったら「うん、良いよ」ってなったわけです。

小友:いや「良いよ」とまでは言われてないんです。最初は「1~5Fは僕らが借り上げてテナントをつけて経営が成り立つように支援しますから大食堂を残してくれませんか?」って言ったら「それはダメ、ムリ」だと。じゃあ「僕が全部引き継いでやるって言ったら怒ります?」って聞いたら、「怒らないけど、たぶんムリ。ムリはしないで」って言われたので「ちょっと考えてみます」って考えることにしました。

本郷:復活させる決意の根幹はなんだったんですか?

小友:週に1回メシを食いにいく場所がなくなるのがイヤでした。あとは、コンテンツパワーがめちゃくちゃ強いから、それを生かした経営の仕方をしたらイケるんじゃないかなって兆しを感じたからです。例えば5Fにゲストハウス入れて泊まれるようにするとか、大食堂のブランドをもっと上手に使いながら人が滞在して体験型の消費をしていくような、百貨店ではない百貨店をつくったらどうかと。

本郷:その事業プランならいけそうだと?

小友:事前情報から改修コストは4億円くらいでは? と推測できたので、1フロアいくらで貸せば10年で回収できるか計算したら、まちの相場感よりもそんなに高くない家賃だったんで、イケるかもとは思いました。それで、閉店報道発表の後の3月20日、僕ら記者会見を開いて「5月末までに、引き継げるかどうかの検討結果を発表します」と伝えたんです。「引き継ぎます」じゃなくて「検討を開始します」って言ったんです。「僕らはここを残したいと思ってるんですけど、みんなのチカラ貸してくれませんか? 僕らと一緒に何かやりませんか?」っていうのをメディアを使って訴えかけたんです。

本郷:共感してくれる人がいるって直感的にわかってたんですね?

小友:いるはずだと思ったし、いないなら諦めようと思いました。

本郷:行政はどんな役割をしたんでしょう?

伊藤:ほとんど小友さんの経営手腕や企画でしたから、市としては大したことはできないけどできる支援は何でもやろうみたいな、そっと後ろから付いていくみたいな感じですかね。例えば耐震補強のお金についての支援ですとか、建築基準法関係の法令にちゃんと合っているかのチェックの相談に乗るですとか、そういうことを後ろからサポートしていくような。

本郷:それで5月末の記者会見はどうだったんでしょう。

小友:「ごめんなさい、まだ結論が出ません」っていう記者会見になりました(笑)。そもそもなんで5月末にしたかっていうと、6月7日に百貨店が閉まるから。最良のシナリオは百貨店を閉めないことだったんです。「5月末で僕ら引き継ぎました!閉まらず継続します」って言えれば良かったんですけど、結局それはムリでした。「ちょっと8月末まで待ってもらって良いですか?」って言って再検討することになりました。

初期投資が4億円の想定で回収できる家賃でテナントを入れることはできてたんですけど、初期投資が6億円以上かかる試算になっちゃっていたんです。用途変更のせいで余分にお金がかかっちゃうんですね。例えば宿泊施設を5Fに入れると建物の用途が異なるからエレベーターはこれじゃダメで、2機取っ替えるのに7千万円かかるとか。用途変更が超キツくて、これはできないなーどうしよう、諦めますって言うかなー。。。でもまだ検討しきってないところもあったし、もうちょっと時間下さいって言って、検討期間を延長したんです。

本郷:2億円オーバーしているのをどうしようか、と。

小友:そうです。用途変更コストだけで2億円近くあったんで用途変更しないっていうことしかないな、と。ってことは、6Fの大食堂は大丈夫だとして、じゃあ1Fから5Fを物販で埋めるか。でも全部物販では埋まる気がしないっていうか、埋めてもムリって思って。で、「あ、閉めちゃえ」みたいな。

本郷:閃いたんですね。

小友:そう、エアコン設備を1フロアに入れる毎に1500万円かかるので、2~5Fを閉めてしまえば4フロア分の6千万円が浮く。また、8Fにあった古い電源設備を降ろして捨ててまた新しいのを上に持ってこなきゃいけないんですけど、この降車作業と廃棄コストだけで3千万円かかるから、1Fに新しい電源設備を置いて8Fの古いやつはそのまま放置することにすれば3千万円まるまる浮く。そんなふうにコスト下げていって、2.6億円ぐらいにまでコストが下がって、2~5Fのフロアを閉めることで事業計画上の売上げは下がりましたけど、10年間で稼げる利益として3億円ぐらいは見えたので、これで回収できるじゃん、やろうってなった。

本郷:実際にやってみてどうですか?

小友:うん、ほぼ予想通りですね。

本郷:マルカンビル大食堂って、なんであんなに人が来るんでしょう?

小友:あの大食堂を作ったのは株式会社マルカンの創業者の方ですけど、この方の美学ですね。この方は食堂で利益出さなくていいから、とにかくお客さんに満足して笑顔で帰ってもらうことだけを考えたので、できる限り量を多くして、できるだけ良い材料を使って、できるだけ安く出そうってずっと言い続けてきたんです。食堂が「あそこに行きたい!」という場所になれば、自然と1Fから5Fで買い物してくれるっていうロジックを50年近く前に立てて商売されてきた。すごい商売人なんです。お客さんに楽しんで喜んでもらうために、社長自ら虎柄のコートを着て店に立ち、店が混雑していても「奥が空いていますからどうぞどうぞー!」ってやってたんです。安くて、美味しくて、ボリューム満点で、社長自らがお客さんに声をかけている、そういう場所だったんです。

伊藤:あの大食堂は、敷居が超低いんです。いまこの勾当台公園でも小さな子どもがきゃーって言って走り回ってますけど、マルカンビル大食堂の空間もそれが許容される感じなんですね。親御さんも気を使わなくて良いくらい遠慮なく駆け回ってくださいみたいな雰囲気があるんです。農家のお父さんだって作業着に長靴姿でも許されるくらいの寛容さがあって、気楽に入れちゃうところが他にはない良さかなって思います。

本郷:入りづらさが一切ない。

小友:ないですね。僕なんか小学校3年生の時にひとりでソフト食ってましたもん。当時130円でしたけど、おこづかい握りしめて行くと買えるじゃないですか。ふつうはお店に入って小学校3年生が何か頼むってだいぶ障壁が高いけど、駄菓子屋で買う感覚でレストランに行けてた。

本郷:生活の一部なんですね。市民みんながそう思っている。すごいですね。

小友:僕、みんなのまちにはマルカン百貨店の大食堂みたいな場所があると思ってたんですよ。そしたら意外とないみたいで。

本郷:それをよくぞ復活させてくれましたね、本当に。

小友:いや、ただ僕が欲しかっただけで。

本郷:そうすると、一旦は閉店して、それを復活させることになったわけですね。

小友:そうです、9ヶ月間休業し、その期間で中の厨房機器を全部替え、防水塗装し直し、電気設備を全部1Fに移し。。。

本郷:スタッフはどうしたんですか?

小友:できるかぎり再雇用しました。というか、むしろ逆にどうしてもいてもらわないとムリだったんです。飲食のプロに見てもらったんですけど、「何百人というお客さんが一気に昼時にやって来て、一気に注文してきたものを、あの速度で出すっていうのはちょっと人間業じゃないです。それができるのはあのメンバーしかいないと思いますよ」って言われました。なるほどと思って、6月7日に閉店してから3日後くらいから僕はメンバー全員と一時間以上の面談をして「頼むから再開したら残ってくれ」って一生懸命お願いしました。

伊藤:文字化されたレシピもなかったので職人に残ってもらわないといけませんでしたし。

本郷:レシピがなかった?!

伊藤:職人の暗黙知って言うんですかね? 職人の脳みその中にしかなかったんです。

小友:ホールの責任者を探すのも大変だったんですが、マルカン百貨店の大食堂ファンからのたれ込み情報がありまして。「マネージャーがいない、ホール責任者ができる人が欲しい」っていうのをイベントで話したら、「ちょっとやれそうな人がいるんだけど会ってみない?」って連絡をもらって。「マジっすか?すぐ行きます」って東京でお会いしてお願いして。それが、再開するしないの発表の一週間ぐらい前にようやく確定したんですね。それが決まってなかったら再開するって言えなかったかもしれないですね。8月最終週ぐらいのことです。

本郷:ホール責任者の存在が大事なんですね?

小友:いないとムリですって厨房の責任者が言ってました。厨房の責任者も既存のメンバーなんですけど、トラブルがあったときの対処とか、アルバイトやパートがほとんどのウェイターさんのシフト管理だったりとか、そういうのまわせる人がいないとムリですって。ほんと良かった、ファンからのたれ込みのおかげで見つかって。

伊藤:調理スタッフにも調理部門のチーフみたいな支柱となる方がいて、「彼が残るんだったら僕たち残っても良いよ」って言われました。やっぱりスタッフもすごく大人数なので非常に難しいってのは従業員もわかっていて、その人がまとめてくれるんだったら僕たち残るっていう気持ちがあったみたいです。ホール責任者や調理のチーフといった現場のキーマンが小友さんと一緒に再開しようって言ってくれたのが大きかったと思います。逆に彼らがうんって言ってくれないと、スタッフも離れていっちゃったかもしれないですね。

小友:事業計画上問題なくでも、ヒトの問題で8月末に「すいません再開できません」って可能性もあったんです。一週間ぐらい前のタイミングで、本当にスレスレでした。

本郷:お金の問題よりもヒトの問題の方が大変だったんだ。

小友:それはもうまちがいないですね。お金は何とかなりますから。

本郷:今後の展望もお聞きしたいんですけど。屋上使って何かやりたいって言ってました?

小友:屋上を風呂にしようと思っています。「マルカンビル大浴場」。

本郷:聞きましたかみなさん、マルカンビル大浴場です。

小友:マルカンビル大食堂の上のマルカンビル大浴場。花巻は温泉地なんです。50軒ぐらい温泉宿が集積している地域で、源泉も色んなところにあるので、タンクローリーで温泉持って来こようと思います。タンクローリー1往復いくらかかるかももうわかってますし、どこの源泉を持って来られるかもわかっています。あとは温泉設備作るのにいくらかかるの?っていうのと、温泉が上に乗っかっても大丈夫なように計算していま耐震を考えているところです。

本郷:浴場をつくる前提で耐震補強していると?

小友:そう、ちょっと強めにつくっています。花巻には東北随一の浴場作りのプロがいるんです。灯台下暗しですよね。彼らが協力してくれるっていう体制になってるので、めっちゃありがたいですね。

本郷:すごいですね、マルカンビル大浴場。どうですか?行政的には。

伊藤:小友さんならやっちゃうんだろうなって。我々が想像できないことをやってくれるのが小友さんの家守舎なんですよね。我々の想像力の範囲だとたぶんつまんないと思うんですけど、我々の想像力の上を行ってもらってこそっていう期待感がすごくありますね、はい。

小友:ただ好き勝手やってるだけですけどね(笑)。

SPOT.
マルカンビル大食堂/岩手県花巻市

マルカン百貨店(岩手県花巻市)は2016年6月、43年の歴史に幕を閉じた。しかし、閉店報道後から地元高校生が6階大食堂の存続を求めて約1万人の署名を集めるなど、地元に愛されてきた食堂の復活を望む声も多く、ついに2017年2月20日、リノベーションまちづくりの手法で再開。以前と変わらぬ賑わいを見せている。

岩手県花巻市上町6−2

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